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【私の本棚】落語家・桂文枝さん 『道頓堀の雨に別れて以来なり』

 □『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』田辺聖子著 中公文庫 全3巻(1100~1200円+税)

 ■川柳、創作落語の原点

田辺聖子の著書「道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代」(文庫)
田辺聖子の著書「道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代」(文庫)
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 田辺聖子さんの作品が好きで、短編集で「創作落語」を作ったこともあります。書店でこの本を見かけたとき、タイトルにひかれてすぐに上巻を買いました。正直、「えらい分厚い本やな…たぶん下巻は読まへんな」と思ったのですが、あっという間に読み切って、下巻もすぐ買いました。多くの川柳作家の人生や、それぞれの考え方の違いによる離合集散と、川柳の歴史や魅力が書かれた面白い伝記小説です。

 岸本水府(すいふ)は、俳句が「花鳥諷詠(ふうえい)」であるのに対して川柳は「人間諷詠」だと言ったそうです。17音で相手に状況を想像させ、笑わせるというのはすごい。僕らはあんなにしゃべらなあかんのに。ただ、“人間を詠む”ところは上方落語にも通じるものがあって、僕は川柳から物語を膨らませて創作落語を作るようになりました。僕の落語は、この本のおかげで広がったんです。川柳は言葉遊びとして扱われがちですが、本来は人間の本音や人生を描き出す、文学性の高いもの。作る側も読む側も、物の見方が問われるものです。

 実はこの本を読むまで、水府のことも、川柳のこともよく知りませんでした。それが一気に川柳に目覚めて、大阪の文化人に声を掛けて句会を立ち上げました。水府の創刊した川柳誌「番傘」にちなんで、名前は「相合傘(あいあいがさ)」。だんだんと組織が大きくなって、僕は数年前に離れてしまいましたが、最近、また新しい「傘」をつくりたいと思っているところです。

 本の中で気になった句のあるページには印を付けています。その一つが、「大阪弁 ほろぶ証拠は いらっしゃい」。「おいでやす」が死語になったことをあわれんで作ったそうですが、僕のことかと思ってドキッとしました。一番大きい印が付いています。

桂文枝
桂文枝
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【プロフィル】桂文枝(かつら・ぶんし) 昭和18年、堺市生まれ。41年に五代目桂文枝に入門。46年から「新婚さんいらっしゃい!」(朝日放送)の司会を務める。平成24年に六代目文枝を襲名。現在までに290超の「創作落語」を発表。10月8日には堺市の「フェニーチェ堺」で独演会を開く。

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