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【寅さん50年 男はつらいよを読む-吉村英夫】(12)「流れ流れの…」寅とリリー

 リリーの言葉に寅は共鳴する。「うん、あぶくだよ。それも上等なあぶくじゃねえな。風呂の中でこいた屁(へ)じゃねえけど、背中のほうへまわってパチンだ」。

 情感に満ちたシーンはシリーズでも他を圧する。生きることの喜怒哀楽を「喜劇」的な「軽さ」を装ったなかで描き切っている。喜劇でしか表現できなかったろう。山田洋次は天性の喜劇映画作家である。2人の孤独な魂がスクリーンからにじみ出てくるようだ。

 妻なし、子なし、定職もない寅と、母の過剰な干渉から逃れて精神的に天涯孤独のリリーは、互いに相手のなかに自分と共通するものを見て急速に近づく。

 以後、2人は別れと再会を繰り返し、その愛の葛藤が、北海道から沖縄までを舞台にして面白おかしく、そして哀しく展開していく。リリーはシリーズ最多登場のマドンナである。

よしむら・ひでお 映画評論家。三重県の高校教諭を経て、三重大学非常勤講師、愛知淑徳大学文化創造学部教授などを歴任。『完全版 男はつらいよの世界』(集英社)、『松竹大船映画-小津、木下、山田太一、山田洋次の描く〈家族〉』(創土社)など著書多数。津市出身。79歳。

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