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【漫画漫遊】『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』泰三子著 講談社 知られざる警官の日常

 警官が主人公の漫画は多いが、だいたい特殊能力を持っていたり、何らかの過去を隠していたりする。そして、男性が多数派だ。それとは対照的に、『ハコヅメ』(モーニングで連載中)の主人公はヒラの女性警官。「ハコ」(交番)勤務の警官が普段どんな仕事をし、愚痴を言い、ささやかな誇りを持って働いているのかが描かれている。現代の世相も反映した警察漫画だ。

 舞台は架空の「岡島県警」。新米女性警官・川合が勤務する交番に、パワハラ疑惑のある才色兼備の藤巡査部長が異動してくる。2人がコンビを組んで大事件を解決する…のではなく、通報対応から夏祭りの警備まで管内の事案を一つ一つ処理していく。新聞で言えば地方版の小さな記事か、それにもならないケースがほとんどだ。にもかかわらず、「警官の日常」をここまで面白く読ませる点に作者の力量を感じる。

 本作には「ザ・縦社会」の理不尽や過労に苦しみながらも奮闘する警官の等身大の姿が描かれている。捜索現場でのトイレの確保など女性警官が抱える悩み。徹夜明けでフラフラになり、限界を感じながらも仕事の手は抜かない各署員…。リアルな描写に加え、自虐ネタやギャグを盛り込んだキレのある会話劇が魅力だ。

 作者の泰三子(やす・みこ)さんは某県警に約10年勤めたのち、漫画家に転身した元女性警官。古巣の裏側を描いているため、設定やストーリーには説得力がある。警官の気を引くために通報を繰り返す男女の存在など、世間には本当に多種多様な人がいることも改めて実感させられる。

 基本的に笑いのある作品だからこそ、シリアスなエピソードには胸を締め付けられる。4巻収録の「トラウマ」の回は、乳児が犠牲になる痛ましい交通事故が描かれる。なぜチャイルドシートが必要なのか。どのような辛(つら)い経験と思いを背負って一人の警官が成長していくか。これ以上ないほどよく分かる。

 既刊7巻。一般読者はもちろん、警察関係者、県警担当として奮闘している若手記者にもおすすめ。(本間英士)

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