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“オケと俳優の競演”堤真一、本邦初演ストッパード異色作主演

「オーケストラのメンバーは“体制の一員”。素晴らしい芸術を生むが、オケに入りたくない人間もいる」と自由について語る堤真一(三尾郁恵撮影)
「オーケストラのメンバーは“体制の一員”。素晴らしい芸術を生むが、オケに入りたくない人間もいる」と自由について語る堤真一(三尾郁恵撮影)
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 英現代演劇を代表する劇作家で、高松宮殿下記念世界文化賞受賞者、トム・ストッパード(81)。「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」や、米映画「恋に落ちたシェイクスピア」(1998年)で、日本でもファンが多いが、中でも異色作といわれるのが「良い子はみんなご褒美(ほうび)がもらえる」だ。35人編成のオーケストラと俳優が競演しながら、ミュージカルではない舞台だ。 (文化部 飯塚友子)

「こんな舞台初めて」

 「この作品がミュージカルだったら、出演していません。オーケストラと仕事するなんて一生、ないと思っていました」と目を見開いて強調するのが、同作に主演する俳優、堤真一(54)だ。蜷川幸雄(1935~2016年)や野田秀樹(63)ら、日本を代表する演出家から信頼され、舞台経験豊富な実力派の堤をして「こんな舞台は初めて」と漏らす作品。オケを含め出演者が多数ということもあり、英国でもめったに上演されてこなかった。日本でも堤主演の舞台が、本邦初演となる。

 物語は、旧ソ連と思われる独裁国家の精神科病院で展開。誹謗(ひぼう)罪で捕まった政治犯(堤)と、オーケストラを率いていると信じ切っている妄想男(橋本良亮)による会話から、回想と妄想が入り交じって再現される。観客には、妄想男の頭の中のオケが、見える存在として登場する。

 「僕自身には、音楽は“聞こえない”設定です。でもお客さまには、オケも見えるし、音楽も聞こえる。オケは舞台上に存在し、BGMではなく、芝居に参加します。オケが演奏するフリをする場面もあって、非常に面白い、独特な世界観の芝居です」

妄想男と政治犯

 芝居が進行するにつれ、妄想男の自由過ぎる発想と、政治犯の生きる窮屈な社会があぶり出され、「自由とは何か」という命題が浮かび上がっていく。堤演じる政治犯は、不当に逮捕された友人を救う活動で、政治犯を収容する特殊な精神科病院に入れられ、当局の調べにも妥協せず、ハンストをする筋の通った男だ。

 「台本を読んだ当初は、すごく意志の強い人物だと思いました。でもたまたま、中国で弾圧された宗教団体の男性を追うドキュメンタリー番組を見たら、見るからに根性のありそうな体育会系の人ではなく、学者にしか見えない、淡々と話す華奢(きゃしゃ)な人だった。でも、そういう人物造形は、演劇としては面白くない。僕が演じる政治犯は、拷問で気が狂ってしまえば楽になれるのに、そうなれなかった人で、演じる難しさを感じます」

現代の不自由さを浮き彫りに

 チェコ出身のユダヤ系家庭に生まれたストッパードは、1939年、ナチスの迫害を逃れシンガポールに移住。父の戦死後、英国に移った。そんな来歴もあって、人権問題にも深い関心を寄せ、77年初演の今作を含め、旧ソ連や東欧諸国の表現の自由への弾圧、抑圧的な政権を扱った作品も少なくない。

 日本では政治犯など遠い世界の話にも思えるが、堤は今作で描かれる窮屈な社会を“特別”とは感じないと話す。

 「今の日本は一見、自由ですが、社会全体が監視し合っているような窮屈さがあると感じます。不祥事やばかげたネットへの投稿が徹底的にたたかれますが、五人組が1億人組に広がっているような不自由さもある」

 社会規範から外れた、とのレッテルを貼られた政治犯が、自由を得るために格闘する姿を、ストッパードは皮肉を込めて描く。

 「この作品は古くない。SNS(会員制交流サイト)への書き込みが炎上するなど、思ったことも発言できない今の時代の不自由さが、この作品で浮かび上がると思います」

 平成28年に出演した「アルカディア」以来のストッパード作品。迷い、反発、正義、抑圧…と、さまざまな感情が潜む膨大なせりふに、体重を減らしながら全力で取り組んでいる。

 演出は英ロイヤル・バレエ団出身の振付師でもあり、英演劇界最高の栄誉であるオリビエ賞受賞者のウィル・タケット。ほかに出演は斉藤由貴(52)ら。

 東京公演は4月20日~5月7日、TBS赤坂ACTシアター(東京都港区)。03・3477・5858。大阪公演は5月11、12の両日、フェスティバルホール(大阪市北区)。0570・200・888。

     

 つつみ・しんいち 昭和39年、兵庫県出身。62年、NHKドラマ「橋の上においでよ」で主演デビュー。以後、舞台や映画で広く活躍。平成9年、舞台「ピアノ」「キル」の演技で紀伊國屋演劇賞個人賞。20年、映画「クライマーズ・ハイ」「容疑者Xの献身」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞、助演男優賞など、受賞歴多数。

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