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【鑑賞眼】「母と惑星について、および自転する女たちの記録」

左からキムラ緑子、芳根京子、田畑智子、鈴木杏(尾嶝太撮影)
左からキムラ緑子、芳根京子、田畑智子、鈴木杏(尾嶝太撮影)

 ■宇宙の摂理感じる余韻

 蓬莱竜太(ほうらい・りゅうた)の鶴屋南北戯曲賞受賞作の再演が、戯曲の価値を改めて示す好舞台となった。栗山民也演出。母であるより、女であることを優先し、奔放に生きた母親(キムラ緑子)と、彼女に振り回され続けた娘3人(田畑智子、鈴木杏(あん)、芳根京子)による、回想形式の4人芝居だ。今回、新キャストとしてキムラと芳根が加わったが、これが奏功。シンプルな装置の中、舞台には登場しない4人それぞれの“男”の存在を想像させる会話も鮮やかで、再演組の田畑と鈴木が芝居を支え、物語の進行役を担う芳根も健闘している。

 特筆したいのが、キムラの演技。酒好き男好きギャンブル好きで、育児放棄や介護放棄のような行為を繰り返す難役だが、キムラは場末のバーのママで生計を立てる空気感、生活感も絶妙でチャーミングなのだ。

 だからこそ母親の死後も、娘たちは恒星の引力に引っ張られる惑星のように、母の側を周回し続ける。母の遺灰をまくため、3姉妹は母が憧れたイスタンブールに渡るが、異国でも母のエピソードを披露し、笑い合う。そして幕切れ、母を反面教師とし、結婚や出産に踏み切れなかった3姉妹が、指からこぼれ落ちる母の遺灰の中から、それぞれの形で命をつなぎ生きる決意を固める。

 逃れられない「家族」という存在を受けいれ、力強く自転し始めた女性たち。小さな母子家庭の物語は最後、輪廻(りんね)という宇宙の摂理を感じさせるスケール感で舞台に広がり、余韻を残した。26日まで、東京都新宿区の紀伊国屋ホール。(飯塚友子)

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