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【鑑賞眼】パルコ・プロデュース「世界は一人」 独り投げ出された寂寥感

小学校同級生時代の3人、左から吾郎(松尾スズキ)、良平(瑛太)、美子(松たか子)(引地信彦撮影)
小学校同級生時代の3人、左から吾郎(松尾スズキ)、良平(瑛太)、美子(松たか子)(引地信彦撮影)

 家族関係が崩壊した不幸せな家庭を描く劇団ハイバイの岩井秀人が、シンガー・ソングライターの前野健太と組んで音楽劇を初めて手がけた(作・演出は岩井)。小学校以来の同級生が人生で何を失ったのか、この世界に独り投げ出された寂寥(せきりょう)感が浮かび上がる。

 かつて製鉄業で栄え、今はうらぶれた海辺の町。そこに生まれ育った吾郎(松尾スズキ)、美子(松たか子)、良平(瑛太)は同級生。吾郎は父母に溺愛されて育った。美子の家は裕福だが母の愛情を知らない。恵まれない良平はそんな2人に複雑な感情を抱く。関係はねじれ交錯する。

 夜の海を前にたたずむ吾郎。前野がギターで歌いながら町の変遷を語り、やがて林間学校で寝ている吾郎、良平、美子が先生(古川琴音)にトイレに起こされる場面に。鉄パイプの構造物が回り、時間が過去と現在と移り変わる。

 セリフの詩的な要素を前野が吸収し心が張り叫ぶような楽曲。稽古場で俳優と一緒に曲を立ち上げたようにざっくばらんで味わいがある。物悲しい旋律が通奏低音のように流れ、「知らない人でいこう 出会い直そう」と歌うのは切ない。

 ただ、人物の関係性が分かりにくいところもある。吾郎と美子の娘・藍(平田敦子)が登場する別の空間が現実か幻想か、死後なのか境界が読めない。岩井独特の心の闇の世界は心情的に寄り添えるが、全般的に暗く単調で起伏も欲しい。

 ほかに菅原永二、平原テツが出演、前野ら演奏メンバーも舞台に参加する。17日まで、東京都豊島区の東京芸術劇場プレイハウス。(演劇評論家 河野孝)

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