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柳美里が福島の高校生らと東京公演 震災の記憶、演じて解放

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 芥川賞作家の柳美里(ゆう・みり)(50)が、東日本大震災を機に福島県南相馬市に移住し4年。旧警戒区域に暮らし、震災の記憶を発信する。昨年は戯曲集「町の形見」(河出書房新社)を刊行したほか、主宰していた演劇ユニット「青春五月党」を被災高校生と23年ぶりに復活。東京公演も控える。(飯塚友子)

 ◆南相馬から発信

 柳は震災直後の平成23年4月から、福島県の被災地に足を運び続けた。「福島県只見町の母の故郷は田子倉ダム建設のため沈んだ。それが被災地と重なり、見ておきたかったんです」

 翌24年から、臨時災害放送局の番組パーソナリティーとして、30年まで毎週出演。被災者約600人の話を収録する中で27年、南相馬市へ移住した。「喜びも悲しみも彼らの暮らしの中にある。安全な場所から通う部外者のままでは、あふれる思いを受け止めきれないと思った」

 30年4月には自宅を改装し、書店を開店。「私もつらい時、本に救われた。本屋は、異世界の扉が一番開いている場所」と、インターネットで資金を募るクラウドファンディングも利用し実現させた。演劇活動は、その店頭から始まった。

 ◆生徒の体験を台詞に

 書店を訪れた福島県立ふたば未来学園高校(福島県広野町)の演劇部長が、柳に「一度、稽古をみてください」と依頼。柳が4年前に開校した同校を訪れ、「この子たちとなら21歳で書いた戯曲『静物画』ができる」と、自ら上演を申し入れた。

 「静物画」は、高校学芸部を舞台に、生や死を語る高校生の揺らぐ心を描いた作品。柳は稽古に通い震災発生時、小学2~4年だった演劇部員一人一人から丁寧に話を聞き、台詞(せりふ)に落とし込んだ。「内に秘めた記憶が蘇り、泣き出す子もいた。でも彼らにしか語れない言葉を引き出す水路として、演劇が必要と思った」

 星萌々子(ももこ)さん(16)は、震災直後の地鳴りを「たくさんの和太鼓を一斉に叩(たた)くみたいなドドドドドッという音が聞こえた」と表現し、柳を驚かせた。震災体験も反映した新たな「静物画」を昨年9月、柳の自宅裏倉庫を改装した小劇場で4日間上演したところ、地元住民に加え、札幌からも観客が訪れた。「心動く物を作れば遠方からも人は来る」と柳は来年夏、劇作家の平田オリザと「浜通り演劇祭」を共催する計画を進める。

 さらに高齢被災者の話を戯曲化した「町の形見」も、刊行。「静物画」は出演高校生の要望で15~17日、BUoY北千住(東京都足立区)で再演される。「東京で分かってもらえるか不安はあるが、今の僕たちを感じて」(半杭奏人(はんぐい・かなと)さん(17))。薄れる震災の記憶に抗(あらが)うように柳は創作を続けている。公演の問い合わせは022・353・9755。

                   

【プロフィル】柳美里(ゆう・みり) 昭和43年、茨城県生まれ。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」の女優を経て62年、演劇ユニット「青春五月党」旗揚げ。平成5年に「魚の祭」で岸田国士(くにお)戯曲賞、9年に「家族シネマ」で芥川賞受賞。27年、福島県南相馬市へ移住し、30年に自宅を改装、書店開店。

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