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【鑑賞眼】シアターコクーン「唐版 風の又三郎」 はかなく美しい異空間

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テイタン前で、織部(窪田正孝、左)は風の又三郎(柚希礼音)と運命的な出会いをする(細野晋司撮影)
テイタン前で、織部(窪田正孝、左)は風の又三郎(柚希礼音)と運命的な出会いをする(細野晋司撮影)

 昭和49年、唐十郎が状況劇場のために書き下ろした同作の初演では、狭いテント劇場に一夜で千人の客が押し寄せたといわれる。唐の薫陶を受けた劇団新宿梁山泊の金守珍(キム・スジン)が演出。登場人物や台詞(せりふ)を大胆に刈り込み、独自のはかなく美しい異空間を作り上げた。

 北風吹く帝国探偵社(テイタン)前で、織部(窪田正孝)は少年の格好をしたエリカ(柚希礼音(ゆずき・れおん))と出会い、愛読書の主人公「風の又三郎」だと慕う。エリカは、自衛隊機を乗り逃げして死んだ恋人を捜して上京した盛り場の女で、手がかりをテイタンに求めた…。

 精神障害を患う織部の幻想と現実が混線し、冥府巡りの物語が展開する。黒衣の葬列が入っていき、教授(風間杜夫)や三腐人(石井愃一(けんいち)、金、六平直政)、夜の男(北村有起哉)ら、奇怪な言動で観客を圧倒する魑魅魍魎(ちみもうりょう)が現れるテイタンの扉は、地獄の門だ。

 テイタン内部には死者の世界が広がっており、恋人もいる。取り返しのつかないものを取り戻そうと、主人公2人のあがく姿は悲しいけれど、いとおしい。

 舞台の広さを生かして俳優達が踊り動き、クレーンを使って浮かび上がったり、片翼の飛行機を飛ばしたりと、スケールの大きさを実現。テント劇場の野蛮なほどの爆発的なエネルギーはそがれたのだろうが、45年の月日を経て、洗練されたファンタジーが、コンクリートの劇場に再構築されていた。3日まで、東京都渋谷区のシアターコクーン。(三宅令)

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