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【鑑賞眼】SPAC「顕(あらわ)れ~女神イニイエの涙~」 奴隷貿易を神話風に

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イニイエ(美加理)は奴隷貿易の罪人たちを審判に呼び出す(三浦興一撮影)
イニイエ(美加理)は奴隷貿易の罪人たちを審判に呼び出す(三浦興一撮影)

 奴隷貿易の歴史を神話的世界として描いたアフリカ・カメルーン出身の女性作家レオノーラ・ミアノの作品をSPAC(静岡県舞台芸術センター)の芸術総監督・宮城聰が舞台化した。昨秋パリで上演している。東洋の輪廻(りんね)思想にも似た独特の死生観を通して鎮魂のための祝祭音楽劇となっている。人間が犯す過ち、愚かさ、傲慢を直視させる。

 生命の創造神イニイエ(動き手は美加理、語り手は鈴木陽代)は「ストライキ」という事態に直面する。輪廻転生(てんしょう)で生まれ出る魂が、奴隷として生きるしかない人間界に受肉することを拒否しているのだ。

 一方で奴隷にされ海の藻くずとなって今もさまよい続ける魂は、自分たちに非業の最期を強いた当事者からじかに真相を聞きたいと訴える。イニイエの計らいで奴隷貿易の罪人たちが呼ばれ真実を語り出す。イニイエは命の連環を回復するために審判を下す。

 冥界を思わせる薄暗闇の中、月のような円盤がつられている。審判の場では2つに割れて白と黒の円になる。舞台の前には、リズミカルな民俗的音楽を演奏するグループが陣取る(音楽は棚川寛子)。

 イニイエの姿は月光菩薩のようで、アフリカの話に仏教・ヒンズー的な文化が融合した舞台が出来上がった。説話風で、場面は感覚的に美しい。だが、不当な死を強いられた人間の怨念はどうすれば解くことができるのか。芸術的な「美」だけでは癒しの力は生まれないだろう。3日まで、静岡市の静岡芸術劇場。(演劇評論家 河野孝)

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