PR

エンタメ エンタメ

【鑑賞眼】慶安太平記 完全通し公演2019 5日間、悪の美学に酔う

Messenger
「慶安太平記 完全通し公演2019」で5日間連続の高座を務めた神田松之丞(橘蓮二撮影)
「慶安太平記 完全通し公演2019」で5日間連続の高座を務めた神田松之丞(橘蓮二撮影)

 かつて講談は、今の連続ドラマのように、長いストーリーを何日間にもわたって披露するものだったが、今は物語の一部分だけを演じることが多い。クライマックスで話が終わってしまい、「この後どうなるの?」というフラストレーションが残るのが残念なところ。だがこの公演はその心配は無用。発端からラストまで、長いストーリーをたっぷり楽しめた。

 “今最もチケットの取りにくい講談師”の異名を持つ神田松之丞(まつのじょう)が江戸時代、浪人たちが幕府転覆を企てた事件に題材を取った「慶安太平記」の全19話、5夜連続の通し公演に挑んだ。

 駿河(するが)の国(現・静岡県)に生まれた由井正雪は、明晰(めいせき)な頭脳と並外れた武芸で頭角を現し、江戸に出て軍学塾に入門、やがて塾を乗っ取り、幕府に不満を持つ浪人たちを集め、幕府への反乱計画を進めていく。

 あくどい手段で浪人たちのリーダーにのし上がっていく正雪ら癖(くせ)のある浪人たちの描写は、松之丞の張りのあるやや低めの声が似合う。激しい立ち回り、テンポ良い台詞(せりふ)でたたみかけ、思わず息をのむ場面、コミカルなやりとりで笑わせる場面とメリハリをつけ、長い物語を鮮やかに描き出した。倒幕計画が露見、捕り手に囲まれるが、無益な殺生はせず「良き夢を見た」のひと言を残し自刃する正雪は、これぞ悪の美学。講談の魅力が詰まった5日間、浮世の都合で4日目の公演を見られなかったのが心残りだった。

 5~9日、東京都豊島区のあうるすぽっと。(栫井千春)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ