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大好評「ぼけますから、よろしくお願いします。」信友直子監督が語る

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両親が写るポスターの前で少し照れた笑みを見せる信友直子監督=東京・赤坂
両親が写るポスターの前で少し照れた笑みを見せる信友直子監督=東京・赤坂

 「亡くなった父、母に会えた気がします」「幸せな時間を過ごしました」

 ドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」の上映後、信友直子監督(57)のもとには見た人から口々に冒頭のようなコメントが寄せられる。

 「声をかけてくれる人たちは作品がどうのというよりも、うちの親は…の話をしてくれます。私は認知症や老々介護の映画を作ろうと思ったわけではなく、年を取っても一生懸命、丁寧に生きていく。丹念に生活を積み重ねていくことは尊いことだと感じてほしいと作りました」

 インタビューに応じた信友監督(撮影と語りも)は、静かなヒットを素直に喜んだ。週末の情報番組「Mr.サンデー」(日曜後10・0、フジテレビ系)発のドキュメンタリー作品。先月3日から東京・ポレポレ東中野で公開され、瞬く間に全国上映の輪が広がり、すでに約50館決まっている。今月上旬には東京・品川のシネコンにも進出し、年末年始は宮城、北海道、神奈川・川崎、福岡、静岡、愛媛などをまわる。

 もともとは一昨年、番組で2週にわたってオンエア。昨年BSフジでも放送され大反響を呼んだ。認知症の患者を抱えた家族の内側を描いた内容。主人公の一人娘でもある監督が自らも乳がんを乗り越え、両親の記録を撮り続けるうちに母の変化に気づく。アルツハイマー型認知症の診断。日々葛藤するが、記録を撮り続けることが自分の使命と感じ作り上げた。

 公開週には、ぴあ映画初日満足度ランキングで1位に輝き、口コミで公開から4週間、全8館の観客数も1万5000人を超え、製作・配給を担当したネツゲンの大島新プロデューサーも「1万人を超えれば大成功といわれるドキュメンタリー映画では異例のヒット作品となりました」と喜びを隠さない。

 特に、監督の舞台挨拶のある回は立ち見が出るほどの賑わいを見せている。地元の広島では父も急きょ挨拶に立った。大盛況の客席を前に「信友直子の父親でございます。今日はありがとうございました。わしは98でもう長うないですが、娘の人生はこれからなんで、どうぞよろしくお願い致します」と。大きな拍手が沸き起こった。

 「あの挨拶…はじめから腰は90度に曲がっているのですが(笑)、さらに曲げて、私もウルッときました。作品は父と母との共同作業。母があそこまで老醜をさらしてくれたのは『おまえは伝える仕事だからちゃんと見ておきなさい』と教えてくれたのだと。ここまで撮っていいものかと自問自答したときもありますが、いい親孝行ができたと思います」

 ちなみに、父の反応は「『わしはあんまり聞こえんしな』などと私には感想を言わない。でも周囲からは『よかった』といわれるみたいでうれしそうです」という。

 ホームビデオの普及で1995年くらいから撮り始めた。2001年から本格的にまわすが、当初は撮りためて亡くなってから世に出そうと思っていた。

 「親の認知症はプライドもあるでしょうし、言い出すのが怖かった。でもテレビの話がきたときに相談したら、案外すんなり『年取ってるからもうええよ。おまえの仕事なら』と言ってくれました」

 タイトルはある日、母が口にした言葉から。「母はブラックユーモアや自虐が得意だったので、母らしい言い方だなと。私の乳がんのときも『私の垂れたボインでよければあげたのに』と言っていました」。

 高齢化社会となり、介護問題などは深刻な側面もあるが、監督はこう考える。

 「認知症をカミングアウト。最初は冷たい目もあるのではと思ったけど『お母さん、大丈夫?』と声をかけてくれる。まわりの環境が優しくなっているのではないか。一人で抱えるのではなく、共有していく社会になっている。母が認知症だから笑えることもある。父と一緒に新しい楽しみ方もある。これまでの父の活躍を見ていると、『自分の妻がピンチのときに案外いい男じゃん。母は当たりくじを引いたかな』と思える。そんなサニーサイドを見ていこうかなと思います」

 公開後、ある先輩からの言葉が一番うれしかったという。

 「介護とは、親が命がけでする最後の子育て…あなたの映画を見ていると本当にそう思ったわ」

 まもなく90歳になる母は9月下旬に脳梗塞になり入院中だが意識はあり、呉へ帰省すると「直子、よう帰ってきたね」と迎えてくれるという。家族の形態は随分と変わったが、信友監督は笑顔でこう締めくくった。

 「父と母のことは相変わらず撮っています」

(産経デジタル)

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