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【鑑賞眼】劇団青年座「残り火」 被害者と加害者の闇

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加害者側と被害者側が重苦しく対面する(左から、山本龍二、松熊つる松、逢笠恵祐) (坂本正郁撮影)
加害者側と被害者側が重苦しく対面する(左から、山本龍二、松熊つる松、逢笠恵祐) (坂本正郁撮影)

 人は自分の家族を殺した犯罪者を赦(ゆる)すことができるのか。古くて新しく普遍化できない難問に挑戦したのが、ミナモザ主宰・瀬戸山美咲が劇団青年座に初めて書き下ろした「残り火」で、黒岩亮が演出した。

 暴走族上がりの藤田健太郎(山本龍二)は12年前、あおり運転で交通事故を誘発し、相手側の8歳だった少女を死なせてしまった。健太郎が服役中、兄貴分の滝本学(山野史人)が妻の明子(松熊つる松)ら家族を援助。出所した健太郎は居酒屋を開業し、妻、弁護士の長男、ハワイ留学を計画する長女らと豊かな生活を持てるまでになった。しかし突然、亡くなった少女の兄、沢渡大樹(逢笠恵祐)が訪ねてくる。

 瀬戸山は危機的状況に身を置いた人間の内面を微細に描く手腕に定評がある。今回は交通事故の加害者と被害者、その家族の心の奥の闇をあぶりだす。

 被害者側の精神的な痛手は簡単には癒えない。法的な償いを終えた加害者が、罪を本当に反省していると思えないとき、どう折り合いをつければよいのか。その罪と罰の心理的なせめぎ合いを山本ら青年座の俳優が丹念に表現し、息が詰まる濃密な空間を生み出した。劇団による集団創造のプラスの所産だ。

 一方、加害者側が心底悔いて苦しんだことを知ったとき、赦しの心が生まれる。妹を忘れないでください、という大樹の祈るような叫びが悲痛に響く。

 2日まで、東京都世田谷区のザ・スズナリ。(演劇評論家 河野孝)

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