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【鑑賞眼】ベトナムのダンス公演「The Mist」 美しい農村 舞台に浮かぶ

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朝日を模した照明に浮かび上がる、牧歌的な農村風景
朝日を模した照明に浮かび上がる、牧歌的な農村風景

 そこは理想郷だった。朝靄(あさもや)のなか、浮かび上がる遠い国。桟橋に見立てられた台、布、霧、稲穂など限られた舞台装置と、若者たちの伸びやかな身体表現、素朴な伝統音楽で、ひたすら美しい農村の風景が作りあげられていた。

 ベトナムのパフォーミング・アーツ・カンパニー「ルーン・プロダクション」によるコンテンポラリー・ダンス公演。製作や演出、パフォーマンスや演奏など、すべてをベトナム人が担当している。国内外で活動するダンサーや振付家を紹介する「KAAT DANCE SERIES(カート・ダンス・シリーズ)2018」にからみ上演された。

 鶏が鳴き、田植えが始まる。若者たちは笑いさざめきながら、糸紡ぎや魚釣りなど一生懸命に働き、神々に祈り、愛を育む。激しいスコールが過ぎ去ると、いずれ黄金色の稲穂が実り、収穫を迎える。

 ベトナム人の生命の源は“米”だという。同じく米を主食とする私たちにはなじみ深い動作が多く、台詞(せりふ)がなくても理解には困らない。かつて日本の里山にあったはずの、そして将来的にはベトナムからも消えゆく予感がする、1年の暮らしのサイクルが舞踊と音楽で表現される。

 身体を宙に投げ出すアクロバットや柔軟性のある美しい動き、細やかな愛を描くバレエなどが次々に展開。上演時間の87分はあっという間に過ぎ、意識はベトナムの農村から劇場の客席に引き戻されたのだった。10月27日、横浜市のKAAT神奈川芸術劇場。(三宅令)

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