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リヨン・ダンス・ビエンナーレ VRで体感、舞踊の内側 舞踊評論家・岡見さえ

ジル・ジョバンの「VR_I」。鑑賞者はゴーグルなどを装着し、仮想現実とダンスが融合した新たな作品を体験する (c)Blandine Soulage Rocca
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 仏東部の大都市リヨンで2年に1度開催される、世界的ダンスの祭典「リヨン・ダンス・ビエンナーレ」。9月11~30日の期間中、舞踊評論家の岡見さえさんが現地を訪れ、ダンスの最先端をリポートした。

                   

 20日間で42作品を上演するダンスの国際的祭典は、パレードを含め観客36万人を集めた。今年の新機軸は、デジタル技術を活用したダンス。仮想現実(VR)2作品が注目を集めた。数人ごとに20~30分間の体験で、料金は7ユーロ(約900円)。

 その一つ、サーカス出身の仏人ダンサー、振付家のヨアン・ブルジョワの「Fugue(フーガ) VR」は参加者がゴーグルを装着して並び、体を静かに揺らす。映像が始まると、参加者は黒装束の男たちに“変身”。導かれた薄暗い空間では、アクロバティックなトランポリン技を含んだダンスの“体験”が展開し、リアルさに恐怖を感じるほどだ。

 スイス出身のジル・ジョバンの作品では、参加者がゴーグルとヘッドホンのほか、両手両足に器具を装着し、パソコンを背負う。すると周囲は石壁の洞窟に、参加者はさまざまな人種のアバター(分身)に変身。急に石壁全体が持ち上がり、視界に荒野が広がる。巨人が出現し、参加者を囲む洞窟を取り去ったのだ。男女の巨人が荒野で踊り、こちらをのぞき込む。次に巨人が壁を置くと空間は室内に変貌、隣でVRのダンサーが踊っている。思わず手を伸ばすが、もちろん触れることはできない。床から伸びた円柱の上では身長20センチほどのダンサーが踊っている。ダンス鑑賞を大きく変える体験だ。

 「自分がダンスの内側にいる感覚を味わい、難解と考えていたコンテンポラリーダンスが理解できた、という観客の反応が大きな収穫」と、ビエンナーレ芸術監督のドミニク・エルヴュ氏は語る。同時に、ゲームに夢中なデジタル世代の子供たちに良質な芸術体験を提供し、遊びを芸術、批評の次元に導いて現代の芸術創造につなげることも狙いだ。デジタル技術を利用して、ダンスというナマの身体芸術への関心を高める取り組みは今後も続けるという。

 もちろん劇場公演も、有名振付家の新作から注目の若手まで力作がそろった。仏のマギー・マラン振付「稜線(りょうせん)」は、現代社会への痛烈な皮肉を込めたダンス。機械のリズムと同調し、サラリーマンに扮(ふん)した男女6人が往来、何もない舞台に消費財をとめどなく積み上げ、しまいに機能不全に陥る。日本の舞踊界からは勅使川原三郎と佐東利穂子が、リヨン管弦楽団の演奏でベルリオーズの「幻想交響曲」を、ロマン主義的詩情に満ちたデュエットに創造、喝采を浴びた。

 一方、若手の作品は狭義の振り付け概念を離れ、泣く、笑うなどの感情の空漠性(つかみどころのなさ)、肉体のもろさを探求したダンスが目立った。振付家もまた、ロボットや仮想現実が、日常に入り込む「現代の人間らしさ」を模索している。(寄稿)

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