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【鑑賞眼】歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」 妙技で演じ分ける「河内山」「俊寛」

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 初代中村吉右衛門の芸を顕彰する秀山祭(しゅうざんさい)。11回目の今回、当代吉右衛門が初代所縁の2役を妙技で演じ分け、客席も楽しませた。

 昼の「河内山(こうちやま)」。お数寄屋(すきや)坊主(茶礼をつかさどる僧)の身ながら、使僧に成りすまし、大名・松江出雲守(松本幸四郎)の屋敷に乗り込んだ河内山宗俊。大名の愛人にされかかる腰元を救い、騙(かた)りがばれそうになるとパワハラ、セクハラを幕府に告げるぞ、とうそぶく。当代の愛嬌(あいきょう)あふれる舌先三寸に胸がすく。

 夜は「俊寛」。平清盛への謀反のかどで流刑となった俊寛(吉右衛門)と丹波少将成経(たんばのしょうしょうなりつね)(尾上(おのえ)菊之助)、平判官康頼(へいはんがんやすより)(中村錦之助)。3年経(た)って待望の赦免船が来るが、成経の妻となっていた海女の千鳥(中村雀右衛門(じゃくえもん))が女性ゆえに乗船を拒否される。俊寛は、なら自分が島に残ると役人を斬ってしまう。実は内心、誰よりも都への帰参を心待ちにしていた俊寛だが、都で待つはずの妻が殺害されたことを知ったからだ。成経らを乗せて遠ざかる船を追いながら「未来で!」と手を振る俊寛。演じるたびに微妙に変化する慟哭(どうこく)の綾(あや)。俊寛のまなざしは船影でも都の幻影でもなく、未来を透過した虚無の空間を見ているようだ。

 昼に中村福助が病癒え、5年ぶりに舞台復帰した「金閣寺」と「鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)」。夜に「松寿操(まつのことぶきあやつ)り三番叟(さんばそう)」と坂東玉三郎が太鼓芸能集団「鼓童(こどう)」と組んだ新作歌舞伎舞踊「幽玄」。

 26日まで、東京都中央区の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)

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