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【鑑賞眼】歌舞伎座「七月大歌舞伎」 海老蔵、計り知れない挑戦の心理

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【鑑賞眼】
歌舞伎座「七月大歌舞伎」 海老蔵、計り知れない挑戦の心理

 歌舞伎座の7月が、連日“市川海老蔵デー”になりつつある。平成26年から際立ってきた傾向で、満席の盛況が続く。生来の天分とあまねく知れ渡った夫人早世の不運、長男(堀越勸玄(かんげん)、5歳)のけなげな成長ぶりへの応援も加わる。応える海老蔵が舞台から発しているものは何か?

 昼の部「三國無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや)」。豊臣秀吉(海老蔵)が、織田信長を本能寺で討った明智光秀を破って、天下統一の足掛かりとするまでの50日間の物語。猿とあだ名された秀吉の逸話から、「西遊記」の夢の場から幕を開ける。かつて市川猿翁(えんおう)が試みた舞台を再構成。苦境に立った三蔵法師を救うため、孫悟空となった海老蔵が宙を飛んで駆け付けるところに、本能寺の危機に毛利攻めから引き返す秀吉を重ねる。

 客席の心をくすぐる演出が巧みだ。海老蔵が解説者として登場するかと思えば、光秀とその身代わり明智左馬之助の2役を勤める中村獅童の見せ場も強調し、馬で琵琶湖を渡るシーンが見せる。大詰には、衣冠束帯(いかんそくたい)のさっそうとした姿に変身した海老蔵=秀吉が、勸玄扮する信長の孫、三法師を支えて登場。客席の喝采は頂点に達する。

 夜の部は「源氏物語」。祖父(十一代目市川團十郎)と父(十二代目團十郎)が演じてきた光源氏の愛の彷徨(ほうこう)を、光と闇の魂の叫びとして、能やオペラ、映像や華道のセットなど、多重な表現で平安絵巻を再現する。海老蔵の挑戦の心理は計り知れない。29日まで。東京都中央区の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)

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