産経ニュース

【鑑賞眼】歌舞伎座「四月大歌舞伎」 愛嬌滲む悪役、仁左衛門の真骨頂

エンタメ エンタメ

記事詳細

更新

【鑑賞眼】
歌舞伎座「四月大歌舞伎」 愛嬌滲む悪役、仁左衛門の真骨頂

 夜の部いっぱいを使って、片岡仁左衛門(にざえもん)が悪の限りを尽くす大名家の分家当主、左枝(さえだ)大学之助とその配下で今は町人となっている立場(たてば)の太平次の2役を“一世一代”として演じている。「東海道四谷怪談」で知られる作者、鶴屋南北が江戸後期に書いた「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」の通し狂言だ。

 本家乗っ取りのたくらみが主筋だが、今作のみどころは、高貴な武士でありながら部下でも子供でも平然と斬り殺してしまう大学之助と、利用価値を失えば誰彼なく女房や愛人さえも手に掛けてしまう太平次に共通する、無感情な人間性のさま。目的のために邪魔なものをいちずに排斥してゆく姿からは、悪辣(あくらつ)非道な行為をゲーム化してみせてしまう小気味よささえ感じてしまう。

 各場一貫して善人たちが右往左往する中で、2人が奏でる様式と破天荒な悪の様相は、歌舞伎の美学を逆説として浮き彫りにして堪能させる。

 仁左衛門は大学之助で冷酷さをなめるような愛(いと)おしさで勤める。太平次では残忍を弄(もてあそ)ぶ無頼ぶりを楽しむ。愛嬌(あいきょう)滲(にじ)む悪役は仁左衛門の真骨頂。2役も5度目となっての演じ納めだ。

続きを読む

「エンタメ」のランキング