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【鑑賞眼】東宝「ファン・ホーム ある家族の悲喜劇」 複眼的に描く同性愛者の父娘

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父(吉原光夫、下)と飛行機ごっこをする小学生のアリソン(笠井日向、上)を見守る43歳のアリソン(瀬奈じゅん、左)=宮川舞子撮影
父(吉原光夫、下)と飛行機ごっこをする小学生のアリソン(笠井日向、上)を見守る43歳のアリソン(瀬奈じゅん、左)=宮川舞子撮影

 3年前にトニー賞を受けたミュージカルの日本初演。主人公が年代を違えて同時に3人登場する斬新な手法で、共に同性愛者である娘と父の来し方を複眼的に描き出す。リサ・クロン脚本・歌詞、ジニーン・テソーリ音楽、小川絵梨子演出。

 現在、漫画家となったアリソン(瀬奈じゅん)は、隠れゲイの父(吉原光夫)が自殺した43歳に達し、追憶する。小学生のアリソン(龍杏美・笠井日向のダブルキャスト)は平穏な家庭の陰で進行していた異変に気づく。大学生のアリソン(大原櫻子)は自らの性志向を認めて彼女をつくる。

 過去のアリソンは当時の意識のままで演じる。見守る現在のアリソンは、追体験しながら記憶を統合し、性の目覚めや父の死の謎に迫ってゆく。この趣向が秀逸だ。ただし演出は父の死に重点を置き、記憶の鍵が環をなす自己再発見のドラマ性は後退している。

 ブロードウェー版と比べると、序盤に家族が合唱する「ようこそ自慢の我が家へ」など快活な歌の弾み方が弱い。この曲は、闇を抱えていた家族の上辺であり、悲劇的な終盤への逆説的な伏線となるはずだ。一方、性に目覚めた瞬間を小学生のアリソンが歌う「鍵の束」、父が自殺直前に激白する「世界の境目」などに訴求力があって終盤は感銘深い。

 大原の感度のよい演技が共感を呼ぶ。瀬奈は距離感をうまく出した。吉原が後ろめたさをにじませる好演。アリソン・ベクダル原作。26日まで、東京都千代田区のシアタークリエ。(演劇評論家 小山内伸)

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