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【鑑賞眼】リンケの再現に歴史的意義 ドーレ・ホイヤーに捧ぐ 「人間の激情」「アフェクテ」「エフェクテ」

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【鑑賞眼】
リンケの再現に歴史的意義 ドーレ・ホイヤーに捧ぐ 「人間の激情」「アフェクテ」「エフェクテ」

スザンネ・リンケ振り付け「アフェクテ」の舞台から(松本和幸撮影) スザンネ・リンケ振り付け「アフェクテ」の舞台から(松本和幸撮影)

 独ダンサー、振付家のスザンネ・リンケが16年ぶりに来日、独表現主義舞踊を代表する一人、ドーレ・ホイヤー(1911~67年)にオマージュをささげる3作品を上演した。

 「人間の激情」(87年)は、スピノザが「エチカ」第3部で語った「虚栄心」「渇望」「嫌悪」「恐怖」「愛」に基づくホイヤー振り付けの5つの小品(62年)をリンケが再現。20年代、独前衛絵画に生き写しな痩躯(そうく)の女性のソロと、ホイヤー自身が踊る映像が交互に現れる。

 戦前に日本の現代舞踊にも影響を与えた表現主義舞踊は古典舞踊(バレエ)の形式性に対し、内面の情動の外在化が特徴だが、リズムに反応し、変容する大胆な身体のフォルムに手先や四肢の細かな動きが機微を伝え、象徴性が立ちのぼる。

 リンケ振り付け「アフェクテ」(88年)と「エフェクテ」(91年)は男女の関係性のデュオ。前者では、視線を交わさず、客席方向にポーズやダンスで魅力を誇示する男女が近付き、いさかい、動きで思いをぶつけ合う。バレエ的な動き、横臥(おうが)し背面と床を使うフィジカルな振り付け、音響、照明も意図が明確だ。

 対照的に後者は、暗闇にサングラスで現れる男女が相互理解の不可能を暗示。天秤竿(てんびんざお)、2人を遮る透明な板、共にかじる黄金のリンゴなど象徴的オブジェを中心に抑制された動きが空間に淡々と生じては消える。

 舞台芸術の祭典「フェスティバル/トーキョー16」を締めくくる、歴史的意義のある公演だった。

 11日、東京・池袋のあうるすぽっと。(舞踊評論家 岡見さえ)

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