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【鑑賞眼】牧阿佐美バレエ団「飛鳥」 見事な踊り、物語に真実味

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【鑑賞眼】
牧阿佐美バレエ団「飛鳥」 見事な踊り、物語に真実味

飛鳥時代が舞台の「飛鳥」にスヴェトラーナ・ルンキナ(中央上)が主演した(鹿摩隆司撮影) 飛鳥時代が舞台の「飛鳥」にスヴェトラーナ・ルンキナ(中央上)が主演した(鹿摩隆司撮影)

 バレエ団の創設者、橘秋子が昭和32年に初演した作品が、実娘の牧阿佐美の演出・振り付け改訂により、創立60周年記念によみがえった。

 舞台は、大陸との交流も盛んな飛鳥時代の日本。姿と舞の麗しさで竜神の妃に選ばれた乙女と幼なじみの若者の悲恋に、芸術に身をささげる人生の厳しさを重ねて描く。

 第1幕は竜神を祀(まつ)る神宮の祭礼の日。仮面や剣の舞、舞楽風の舞の絢爛(けんらん)な舞踊絵巻が展開し、宮に仕える乙女を追って来た若者の再会、恋心のめばえ、惑いが丁寧に語られる。第2幕は一転、バレエならではの踊りを小気味よく連ねる。跳躍や回転、垂直な身体軸に忠実に、腕の角度や肩の丸みで東洋的ムードを加えた振り付けが美しく、滝つぼの霧の精の幻想的な群舞から紫、青、紅と続く竜の踊り、高い技術を示す銀竜のデュオ、金竜のソロ、乙女と竜神の婚礼の踊りが、熱気を高める。物語も、竜妃の座を狙う黒竜の嫉妬、竜神と若者の間で葛藤する乙女の心、裏切られた竜神の怒りが鋭く交錯しながら、終幕の悲劇へ進む。

 主役のゲスト、スヴェトラーナ・ルンキナとルスラン・スクヴォルツォフは、格調高い踊りで奥ゆかしさと情熱を表現。威厳あふれる竜神役の菊地研、しなやかな金竜役の青山季可(きか)ら、バレエ団ソリストの見事な踊りも幻想譚(たん)に迫力と真実味を与えた。

 音楽は片岡良和の曲、美術は新たに絹谷幸二の洋画の映像を使用。邦楽に着想した音色、刻一刻と変化する鮮やかな画は、舞踊表現に新たな効果を生んだ。

 8月27日、東京・初台の新国立劇場。(舞踊評論家 岡見さえ)

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