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【きょうの人】震災後描き日本漫画家協会賞のいがらしみきおさん「乗り越える覚悟があるから、日常を送れる」

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【きょうの人】
震災後描き日本漫画家協会賞のいがらしみきおさん「乗り越える覚悟があるから、日常を送れる」

漫画家、いがらしみきおさん 漫画家、いがらしみきおさん

 東日本大震災から数年を経た海辺の街を舞台に、震災後も広がり続ける社会の亀裂と不安を黙示的に描いた「誰でもないところからの眺め」を刊行し、今年の日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した。

 「小さな揺れにも敏感になり、今も時々、体が揺れているような気がする。毎朝、起きるのが不安です」

 震災時、今と同じ仙台市内のビルの仕事場で被災。自宅も大きな被害を受け、妻としばらく小学校の避難所で過ごした。食料を手に入れるため、自転車で店舗を探し回る日々。「空腹により、だんだんと研ぎ澄まされる感覚を忘れないため、今も週1回は食事をサラダだけにして、当時を思い出すようにしている」と話す。

 受賞作では、自分の名前を忘れるなど自己を失った人々が街を離れ、新しい土地を目指す姿が描かれる。作品に込めたのは、大地震や津波が来る場所から「なぜ、逃げないのか」という問いと、“自分とは何か”というアイデンティティーをめぐる問題だ。

 「作品中、逃げ出せるのは自己を失った人だけ。現実の生活では、不安を感じても、家族や仕事のしがらみがあり、逃げ出せないことが多いから」

 小学生で耳を患い、補聴器なしでは、ほとんど聞こえない。高校中退後、働きながら漫画家を目指し、24歳でデビュー。代表作の人気4コマ漫画「ぼのぼの」は連載開始から今年で30周年を迎えた。

 「耳が聞こえなくなったとき、人生には思いもかけないことが起きると知った。でもそれは乗り越えるしかない。災害も同じ。何があっても乗り越える覚悟があるから日常生活を送れるのです」

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