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【大林宣彦「時をかける少女」を語る】
「角川春樹氏は原田知世の引退作にしたかった」「足長おじさん2人のロマンチズムを体現した作品だった」
《「尾道三部作」は熱狂的な支持を集め、映画のロケ地を訪ねるファンが尾道に殺到した》
僕はかねがね映画とはエンターテインメント、良きおもてなしなのだと強い意識を持って、監督作品で積極的に実験的な取り組みを重ねてきましたが、「時をかける少女」を撮ったことで、ますますその思いを強めることになりました。
大ヒットは良きおもてなしできたから
原田さんに対する角川さんの個人的な恋心に沿って、あんなにも純文学的な色彩の強い、少女の悲恋の物語を商業映画として作ろうと思っても、普通は企画すら通りませんよ。でも、何とか完成した作品が大ヒットした。僕の監督作の中でも最高の興収成績です。お客さんに良きおもてなしができたからでしょう。彼らは純愛映画として受け入れてくれたのです。
良きおもてなしができれば、作品は大勢の人々に愛されるばかりか、世代を超えて、まさに時を超えて、若い人たちの心をとらえることも可能となるのです。
そんな思いを念頭にいま取り組んでいるのは、デジタルの撮影機材でしか表現できない映像の追求です。何か新しい映画が生まれるのではないかと期待していましてね。