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【鑑賞眼】歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」 三つどもえの熱演注目

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【鑑賞眼】
歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」 三つどもえの熱演注目

 尾上松緑(おのえ・しょうろく)、尾上菊之助、市川海老蔵。「團菊祭」ならではの三つどもえの熱演が重きをなしてきた。

 昼。松緑の源蔵、海老蔵の松王丸、菊之助の松王女房千代で「寺子屋」。主・菅丞相(かんしょうじょう)の一子・秀才の命を守るべく、預かる寺子の中から身代わりを選ぶ源蔵の苦悩、それと知って納得ずくでわが子を送り込む松王夫婦の悲嘆。理にかなった芝居ぶりで、現代では理解不能な不気味な物語を悲しい様式美で踏襲する。

 夜では、お嬢=菊之助、お坊=海老蔵、和尚=松緑で「三人吉三(さんにんきちさ)」。“大川端(おおかわばた)”の出会いを17年ぶりに再現。“新三之助”時代の初々しさが考察と個性に染められ、たくましく映える。が、2作品とも筋立てを生きる人物像を理で見せるから分かりやすい半面、余情が薄くなる。現代を生きる俳優と見物の歌舞伎観への兼ね合いが難しい。

 昼は他に、中村梅玉(ばいぎょく)、中村魁春(かいしゅん)らで昭和37年以来の上演という「鵺(ぬえ)退治」があり、「十六夜(いざよい)清心」。菊之助が初役の清心で父・尾上菊五郎の芸をさらう。中村時蔵の十六夜が清元「梅柳中宵月(うめやなぎなかもよいづき)」のくどき場でゾクッとする色香を見せる。切りに中村吉右衛門(きちえもん)の石川五右衛門、菊五郎の真柴久吉で「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」。

 夜。「勢獅子音羽花籠(きおいじしおとわのはなかご)」で、菊之助の長男(寺嶋(てらじま)和史)が初お目見え。2歳半、あどけない孫の門出に菊五郎、吉右衛門両祖父の破顔に見物も誘われ、一笑。「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」は松緑の武智光秀。打ち出しが海老蔵、菊之助で「男女(めおと)道成寺」。26日まで、東京・銀座の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)

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