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【歌舞伎・新境地】まるで美の結晶のような姫役で…五代目中村雀右衛門襲名を控える中村芝雀

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【歌舞伎・新境地】
まるで美の結晶のような姫役で…五代目中村雀右衛門襲名を控える中村芝雀

「父はお芝居が大好きだった。襲名を控え、私もその濃い気持ちやエネルギーを大事にしたい」と話す中村芝雀(鴨川一也撮影)

 平成28年を新たな出発点として、特別な思いで迎える歌舞伎俳優がいる。3月に五代目中村雀右衛門(じゃくえもん)襲名を控える中村芝雀(しばじゃく)(60)。歌舞伎の美の結晶のような、姫役を得意とした京屋(雀右衛門の屋号)の芸を受け継ぎ、3月の襲名披露では、「三姫」と呼ばれる至難の姫役のうち、2役を演じる。(飯塚友子)

 「父(雀右衛門)を目標に勉強を続けて参りましたので、その大切な名跡を名乗るのは緊張します。父が大切にしていた三姫から2役をさせていただけるのは本当に幸せです」

 その2役とは、『鎌倉三代記』の時姫と『祇園祭礼信仰記(金閣寺)』の雪姫(残る1役は『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』の八重垣姫)。夫と父の間で苦悩する時姫は初役、夫を助けたい一心で奇跡を起こす女絵師・雪姫は平成21年に初役で勤め、今回で2度目だ。

 「三姫に共通するのは、『恋するお姫さま』であること。夫のため、時姫は親を裏切り、雪姫は(謀反人に)縛られながらも、(つま先で集めた桜の花びらで描いた鼠を動かし)奇跡を起こす。制約されるお姫さまの動きの中で燃えるような思いを伝えるには、気持ちを込め、パワーを凝縮しなければなりません」

 平成の世には存在しないお姫さまが、舞台で生身で息づいているのが歌舞伎の大きな魅力だ。美しさ、品格、そして、豪華さ。周囲がかしずく立場にふさわしい存在感を、登場しただけで表現しなければならない。

 「今の世の中では生で見られない人種です。歌舞伎のお姫さまは女形芸として研究し尽くされ、洗練された表現で存在する。でも、やはり一番大切なのは役の心、性根です」

 父・雀右衛門(1920~2012年)は昭和15年から6年間、兵役に服し、戦後、20代後半で女形に転向した苦労人だった。だが、その舞台は年齢を重ねるほどに艶麗さを増し、人間国宝にも認定された。

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