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【鑑賞眼】国立劇場「東海道四谷怪談」 負け組の不運…心癒やす幕切れ

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【鑑賞眼】
国立劇場「東海道四谷怪談」 負け組の不運…心癒やす幕切れ

 鶴屋南北の代表作。お岩の亡霊にたたられ、破滅する民谷伊右衛門の悲劇だが、実は「忠臣蔵」の裏話。今回は国立劇場らしい工夫と趣向で、怪談話の背景に「忠臣蔵」の世界をにじませ、赤穂浪士こと塩冶(えんや)浪人の忠義、不忠義の人生模様の哀れを鮮明に描き出した。2度の休憩を入れ、4時間45分たっぷり楽しめる。

 松本幸四郎の伊右衛門が得も言われぬ歌舞伎味で存在する。悪の権化の作りより、運に見放された塩冶浪人のふて腐れた落魄(らくはく)の風情。「浪宅」の場で傘張りをする手先、表情ににじみ出る。続く四谷左門殺し、お岩(市川染五郎)への執着と離反、破滅と、冷酷さより現実に流される不条理感が強い。お岩の命日に「せめて未来を」とつぶやくさまに、本意でない己が人生をのぞかせて塩冶浪人勢の負け組を代弁する。

 染五郎が大奮闘だ。発端に作者・南北役で解説者、そしてお岩、小仏小平、佐藤与茂七になり、「師直(もろのお)館夜討」の大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)と5役。お岩では、“髪梳(す)き”の斬新さ、“戸板返し”でのお岩=小平の死骸(しがい)の早替わり、伊右衛門を死に導く“提灯(ちょうちん)抜け”から宙を跳ぶ新演出のお岩が見せる。他に、坂東彌十郎(やじゅうろう)が直助権兵衛(なおすけごんべえ)と仏孫兵衛(ほとけまごべえ)、大谷友右衛門が伊藤喜兵衛と原郷右衛門、中村錦之助は小汐田又之丞(おしおだまたのじょう)。幸四郎もラストに石堂右馬之丞(うまのじょう)で出る。

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