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【鑑賞眼】歌舞伎座「十二月大歌舞伎」 あまりにも見事な玉三郎のお三輪

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【鑑賞眼】
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」 あまりにも見事な玉三郎のお三輪

 坂東玉三郎が熟成した女形芸の極致を見せる。昼。「重恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」の墨染(すみぞめ)。小町桜の幹に浮かぶ幻影美に陶酔する。関守関兵衛実は大伴黒主(おおとものくろぬし)(尾上松緑(おのえしょうろく))へ恨みを抱く桜の精だ。松緑が愛嬌(あいきょう)を肚(はら)に据え、おおらかに踊る。常磐津、竹本掛け合いの中、墨染の幻、関兵衛の現(うつつ)が交錯する。しなやかさが逸品。少将宗貞で尾上松也、小町姫で中村七之助。

 夜は「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」から、東京では45年ぶりとなる“杉酒屋”、そして“道行恋●環(こいのおだまき)”、“三笠山御殿”を通す。天下を狙う蘇我入鹿(中村歌六(かろく))の野望を阻止せんとする藤原淡海が身を替えている烏帽子折求女(えぼしおりもとめ)(松也)を慕う杉酒屋の娘お三輪と入鹿の妹橘姫(中村児太郎(こたろう))の互いに素性を知らぬ恋の達引(たてひき)。

 前2場で勤める七之助のお三輪も元気で清廉な娘ぶりで良いが、“御殿”で引き継ぐ玉三郎のお三輪があまりに素晴らしい。求女を追って花道に駆け出る恋する娘の健康美が光を放つ。それが官女たちに辱(はずか)しめを受け、求女と橘姫の祝言を聞いて一変させる形相。「疑着(ぎちゃく)」という嫉妬(しっと)の爆発より現実を透過した幽鬼のごとき諦観(ていかん)の怒りで、それ故に淡海側の鱶七(ふかしち)(松緑)に諭され果てる幕切れが哀れを超えた美しい詩情に変わる。

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