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【鑑賞眼】歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」

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【鑑賞眼】
歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」

 ■追善「文七元結」笑って泣いて…絶品

 夜。「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」で坂東玉三郎が阿古屋(あこや)に扮(ふん)し、「琴責め」の場を艶(なま)めかしく勤める。玲瓏(れいろう)な花道の出から、景清の行方詮議となって泰然と恐懼(きょうく)混然とした粋を見せる。琴、三味線、胡弓、3曲を奏で謡うさまに能弁な遊女の誇りがのぞく。裁く秩父庄司の尾上(おのえ)菊之助が陶然と聴きほれる顔に阿古屋放免が映し出される。

 昭和中・後期に活躍した二代目尾上松緑(しょうろく)二十七回忌追善として、二代目が得意とした演目が昼夜に3題組まれた。昼。歌舞伎十八番「矢の根」を、孫の当代松緑が曽我五郎、坂田藤十郎が曽我十郎役で追善。「人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」が笑わせ、泣かせて絶品。左官長兵衛の尾上菊五郎、女房お兼の中村時蔵コンビの、煮込んだくすぶり感が江戸の貧乏長屋にタイムスリップさせる。2人の娘お久の尾上右近も貧しいゆえに娘ぶり装(よそお)えぬさまを自然に出す。屈指の本役だ。当代松緑が二代目も演じた鳶頭で幸せ運び役。文七に中村梅枝(ばいし)、玉三郎が角海老女房でお付き合い。夜に「髪結新三(かみゆいしんざ)」。当代松緑が初役で小悪党の新三。資質に合うが愛嬌(あいきょう)が薄いぶん、眼光に悪が映え過ぎる。家主長兵衛(市川左團次)にやり込められる場のソフト感が前半にも欲しい。

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