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【話の肖像画】漫画家・ちばてつや(4)1年の流浪の果てに本土へ

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【話の肖像画】
漫画家・ちばてつや(4)1年の流浪の果てに本土へ

遠い満州の地で日本人たちはあてどなく歩き続けた(c)ちばてつや

 〈父親の同僚だった親切な中国人、徐集川さんの家の屋根裏にかくまってもらっていた一家だが、逃避中にはぐれた仲間たちの隠れ場所を知ることができたため、徐さんの家を出て合流。そこからまた、逃亡生活が始まった〉

 中国人の略奪から逃げ惑う日々は本当に地獄だった。終戦の年の冬は日本にどうやって帰るかの情報も全くなくて。一緒に逃げている日本兵たちが銃を持っているうちは、「お願いだから殺してくれ」とお願いし、撃ってもらって自殺した人もいたんだよ。ラジオや新聞もないし、正確な情報が入らないから、噂が流れるんだ。「内地ではアメリカ兵に何をされるか分からない」「男たちはみんな奴隷にされている」とか。中国にいても地獄、日本に帰れたとしても地獄なんだって絶望してしまう人も多かった。中国人以外にも、ソ連兵が日本人の貴重品をどんどん持っていっちゃうなんていうこともあったんだよ。見上げるような大男で、ひげがすごくて、子供には優しかったけど、ひどいことをされた女性もいたみたいだ。

 〈その後、ようやく引き揚げ船が出るという情報が入ってきた。船が出航するコロ島(現・遼寧省)まで行けば何とか帰国できることが分かり、希望を抱いた日本人だったが、コロ島に向かう道中でも数々の悲劇があった〉

 日本が戦前に敷設した鉄道があって、列車に乗れることもあったけど、貨車といって屋根も壁もない石炭を運ぶ車両なんだ。子供を真ん中にして大人たちが周りを固め、子供がおしっこしたいといえば、大人が抱いたまま外にするという具合だったんだよ。

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