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【話の肖像画】漫画家・ちばてつや(3)屋根裏で弟に描いた絵が原点

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【話の肖像画】
漫画家・ちばてつや(3)屋根裏で弟に描いた絵が原点

奉天で撮影した家族写真。左から3人目が本人 (ちばてつやプロダクション提供)

 〈ともに逃避行を続けていた日本人の集団とはぐれた一家。途方に暮れる中、救いの手を差し伸べてくれたのは、思わぬ人物だった〉

 奉天の町中で立ち往生していると、声をかけてきた人がいたんだ。奉天で父親が働いていた工場の元同僚で、中国人の徐集川(じょ・しゅうせん)さんだった。ありがたいことに、徐さんはぼくたちをこっそり物置にかくまってくれたんだ。ニンニクとか唐辛子とかを干しておくような屋根裏部屋に入れてくれてね。そのころは、持ってきた米ももうなくなっていたから、そこでは父親がもらってくる野菜くずなんかを食べていたよ。

 大陸は寒いから窓が二重になっているのが普通なんだけど、屋根裏は人が住むことは考えられてなかったんだろう。薄いガラスが一枚しかなくて、とても寒かったよ。結露した窓に指で絵を描いたりしてね。外に出て、日本人をかくまっていることが周囲にばれたら徐さんに迷惑がかかるから、子供らは外で遊ぶことはできなかったんだ。

 〈つかの間の平穏を得た一家。だが、長男のてつやですらまだ6歳で、下には3人の弟がいた。退屈した子供たちが外に出たがり始めるのは仕方のないことだった〉

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