産経ニュース

【話の肖像画】漫画家・ちばてつや(1)平和だった満州に漂う敗戦の兆し

エンタメ エンタメ

記事詳細

更新

【話の肖像画】
漫画家・ちばてつや(1)平和だった満州に漂う敗戦の兆し

引き揚げ体験や中国での生活を描いた漫画を集めた展覧会で公開されたちば氏の作品。少年時代を過ごした奉天の街を、興味津々で歩き回る子供時代の姿を描いた(c)ちばてつや

 〈終戦から70年。現在では「あしたのジョー」など数々の名作で知られる漫画家として活躍しているが、当時は満州の奉天(現・中国遼寧省瀋陽)で家族とともに暮らす6歳の少年だった。今も記憶に残る楽しい満州での生活。しかし、昭和20年8月、日本の敗戦によって立場は一変し、慣れ親しんだ土地を追われることになる。守ってくれるものもない大陸での逃避行。九州・博多に引き揚げるまでの約1年間は、苦難に満ちたものだった〉

 毎年夏になると、いつも満州をさまよったあの頃のことを思い出すね。満州のにおいとか、真っ赤な夕日とか。戦後70年ともなると、ぼくのような人間でも、体験したことを伝えていかなきゃいけないと改めて思うんだ。

 奉天では、父親が印刷工場で働いていて、家族はその社宅に住んでいたんだ。とても大きい工場でね。敷地は3メートルほどもある壁で囲まれていて、商店なんかもあって。いつも印刷機械が動く「ガッシャンガッシャン」という音が響いていて、大きな紙のロールがあちこちに置いてあったのが記憶に残っているね。

 子供は危ないというんで、塀の外に出たらいけなかったんだけど、外から「ワー」とか、にぎやかな音が聞こえてくると、気になってどうしても見たくなっちゃって。塀の近くに積まれていた石炭の山を登って乗り越えたりしてね。大人の後ろにくっついて乗り合いバスに乗って、後で大騒ぎになったこともあったんだ。

「エンタメ」のランキング