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【鑑賞眼】バーミンガム・ロイヤル・バレエ団「シンデレラ」 心温まるリアルな夢のひととき

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【鑑賞眼】
バーミンガム・ロイヤル・バレエ団「シンデレラ」 心温まるリアルな夢のひととき

日本初演されたビントレー振り付けの「シンデレラ」 (長谷川清徳撮影)

 昨年まで新国立劇場バレエ団芸術監督を務めたデビッド・ビントレー率いる英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団が、「白鳥の湖」「シンデレラ」を携え、来日公演を行った。

 ビントレー版「シンデレラ」は、おとぎ話の類型を脱した丁寧な人物造形、物語を自然に繋(つな)ぐ精彩に富んだダンスが特徴だ。この版のシンデレラは、母の死や意地悪な義母・義妹、仙女の魔法に翻弄される受動的ヒロインにとどまらず、弱い者に手を差し伸べ、つらさを想像力で慰める強い心を持つ女性。ガラスの靴も魔法ではなく、母の形見の靴で、裸足で震える老婆(実は仙女)にそれを贈った行動が彼女を舞踏会へ導く。

 王子も、きらびやかなモノや外見より、強い心を尊び探す人物だ。最終幕で、王子は召使姿のシンデレラにひざまずき、踊りに誘う。豪華なドレス姿より、彼女の逆境に負けない意思と優しさを慈しむように。

 シンデレラは同団プリンシパルの平田桃子。舞踏会に行けない寂しさを、箒(ほうき)をパートナーに踊って紛らわすソロのいじらしさ、舞踏会での気品溢(あふ)れる王子とのデュオ、恥じらいつつも王子と互いの愛をゆっくりと確かめる最終幕へ、ヒロインの心理を体の隅々まで気持ちを込めた踊りで丁寧に清々しく演じた。

 脇役の活躍、前衛的な英国モードの香る衣装、ドラマチックな舞台美術の転換もダンスの魅力をさらに増した。会場からは拍手とともに笑いや安堵(あんど)の吐息も漏れ、心温まるリアルな夢のひとときとなった。2日、東京・上野の東京文化会館。(舞踊評論家 岡見さえ)

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