産経ニュース

【鑑賞眼】虚実皮膜…魅せられた1時間 横浜ダンスコレクションEX2015 中村蓉「顔 face」

エンタメ エンタメ

記事詳細

更新

【鑑賞眼】
虚実皮膜…魅せられた1時間 横浜ダンスコレクションEX2015 中村蓉「顔 face」

中村蓉がソロダンスで、女性の“闇”を表現する(c)Yoichi TSUKADA

 多彩な公演と若手振付家のコンペティションを通して日本のコンテンポラリーダンスを推進し、海外に発信してきた横浜ダンスコレクションが今年、20年目を迎えた。

 中村蓉(よう)は、2013年の横浜ダンスコレクションEX審査員賞(最高賞)とシビウ国際演劇祭賞(ポーランド同演劇祭への出演権)を受賞。近藤良平、小野寺修二のダンサーを経て、10年から自作を発表し、力強い振り付けと演劇性を巧みに組み合わせた作風を持つ。

 「顔 face」は新作ソロ。清楚(せいそ)な白のブラウスに紺のひざ丈スカートを着た中村が現れ、これから始まる作品の解説を始める。スターを目指すある女の愛憎劇と心に抱えた“闇”。最後に彼女は観客自身の“闇”を問い、暗転。予告がダンスとして展開する。男への愛と夢の間で苦悩する女、トップスターになった女、そして、永遠の別れ…。

 松本清張サスペンス的な筋書きだが、衣装や身ぶり、歌謡曲による昭和的表象の異化、男物ジャケットを恋人に見立てた一人芝居や人形劇で変化を付ける一方、照明やスモークで造形した空間での見応えあるダンスがロックと溶け合い、踊り手が内に秘める強さと熱を伝える。芝居とダンスが融合し、女の夢の実現とその代償の物語は、踊り手自身の現実と重なる。そのとき「顔」は虚構と真実、外面と内面の両義性の象徴として社会の中で個人が感じる、名状し難い居心地の悪さを浮かび上がらせる。

 虚実皮膜のあわいに遊ぶ練った構成で1時間、観客を引き付けた。今後が期待される才能だ。2月15日、横浜赤レンガ倉庫1号館。(舞踊評論家 岡見さえ)

「エンタメ」のランキング