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【鑑賞眼】知られざる素顔を自分に重ねて DULL-COLORED POP「夏目漱石とねこ」

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【鑑賞眼】
知られざる素顔を自分に重ねて DULL-COLORED POP「夏目漱石とねこ」

(石川純撮影)

 人気コミックが原作の「プルートゥ PLUTO」の上演台本も手掛けた新進気鋭の劇作家、谷賢一が主宰する劇団の新作は、夏目漱石の知られざる素顔が題材だ。かつて谷が別の劇団のために書いた作品を大幅に改訂。30代半ばで作家に転向した漱石の孤独や人間関係の軋轢(あつれき)、秘めた恋などを、史実に基づき、猫と一緒にのぞき込む形を取っている。

 胃を患い、臨終間近の漱石の枕元に、「吾輩は猫である」の主人公や、留学先のロンドンや教師を務めた愛媛県などから本人を知る猫たちが集まってくる。里子に出された子供時代、正岡子規との交流、女流歌人の大塚楠緒子との恋などが猫を通して語られていく。引っ越しを繰り返し、妻や子供に対する家庭内暴力もあったなど意外なエピソードも登場する。

 舞台は簡素な障子戸の和室で、音響を極力、排した。その静謐(せいひつ)から伝わってくるのは、漱石が実際に感じていたであろう「寂しさ」だ。多数の評伝も出ている漱石は負の事実を隠して生き抜いた。「人の心の奥底をたたくと、全く知らない音が聞こえてくる。上演が漱石を通して自分を見るきっかけになれば」と谷は話す。

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