【鑑賞眼】関西テレビ放送「サメと泳ぐ」 軽妙でダーク、演出に工夫 - 産経ニュース

【鑑賞眼】関西テレビ放送「サメと泳ぐ」 軽妙でダーク、演出に工夫

脚本家志望のガイ(田中圭、右)は豪腕プロデューサーのバディ(田中哲司、左)にこき使われる (引地信彦撮影)
 野望が渦巻くハリウッドの内幕を描いた映画の舞台化。商業主義か芸術か、仕事か恋愛か。価値観がぶつかり合う中で嘘や駆け引き、中傷が錯綜(さくそう)し、映画業界の非情が浮かび上がる。マイケル・レスリー上演台本。千葉哲也演出。徐賀世子(じょ・かよこ)訳。
 人を人とも思わぬ豪腕プロデューサーのバディ(田中哲司)の下で、アシスタントとしてこき使われる脚本家志望のガイ(田中圭)は、良質の映画を志向する女性プロデューサーのドーン(野波麻帆)と恋人になる。にわかに会長から、興行成績よりも作品の質を求められたバディは、ドーンが進めていた企画を取ってくるよう、ガイに命じる。
 純粋だったはずの恋愛がビジネスに利用され、関係がゆがんでゆく。憎むバディに、ガイがいつしか近づいてしまう展開が面白い。ただし、終盤のどんでん返しにはいささか無理がある。
 千葉演出はジャズで場面転換をつなぎ、軽妙でダークなエンターテインメントに仕立てた。その場にいない人物を別空間に登場させて、目に見えない影響を暗示するなど、細かい工夫を施す。冒頭のシルエットシーンはガイの豹変(ひょうへん)への、ドーンが散乱させたまま放置される花束は結末への、それぞれ巧妙な伏線となる。
 哲司はコミカルな面も見せながら横暴なボス像を造形。圭は終盤に向けて変化をつけたが、野心を秘めた二面性の深みが欲しい。
 9日まで、東京都世田谷区の世田谷パブリックシアター。兵庫・福岡など巡演。(演劇評論家 小山内伸)