【映画深層】22年ぶり「男はつらいよ」新作 山田洋次監督がもらしたその意外な内容とは… - 産経ニュース

【映画深層】22年ぶり「男はつらいよ」新作 山田洋次監督がもらしたその意外な内容とは…

映画「男はつらいよ」50周年プロジェクト発表会に出席した山田洋次監督(右)と女優の倍賞千恵子(萩原悠久人撮影)
映画「男はつらいよ」50周年プロジェクト発表会に出席した山田洋次監督(左)と女優の倍賞千恵子(萩原悠久人撮影)
映画「男はつらいよ」50周年プロジェクト発表会に出席した山田洋次監督(右)と女優の倍賞千恵子(萩原悠久人撮影)
映画「男はつらいよ」50周年プロジェクト発表会に出席した松竹の大谷信義代表取締役会長、女優の倍賞千恵子、山田洋次監督(左から)(萩原悠久人撮影)
 国民的映画シリーズ「男はつらいよ」の新作が、22年ぶりに作られることになった。しかも主演は亡くなった渥美清さんと聞いて、どんな作品になるのかいぶかしむ人も多いことだろう。9月6日に東京都新宿区の映画館で開かれた「男はつらいよ」50周年プロジェクト発表会でも、ストーリーをはっきりと明かさない製作の松竹に対して、取材陣が食い下がる姿が見られたが、山田洋次監督(86)の受け答えから浮かび上がってきた意外な内容とは-。
「ちょっと不思議な映画」
 「ちょっと不思議な映画ができるんじゃないかと、僕も楽しみにしている」
 発表会の席上、作品を手がける山田監督はいたずらっぽい表情で語った。
 「男はつらいよ」は、昭和44年に第1作が公開されて以来、主演の渥美さんが平成8年に亡くなるまでに48作品が作られ、1人の俳優が演じた最も長い映画シリーズとしてギネス世界記録にも認定されている。渥美さんの死去後、先端技術を駆使して作られた「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」(平成9年)を入れると49作品となり、松竹としては、第1作から50年となる来年の公開に向けて、“50周年で50作目”を売りにしたい考えだ。
 発表会に登壇した深澤宏プロデューサーは「10月中旬から11月いっぱいかけて撮影所および都内ロケで撮影を行う。主演はさすがに寅さんなので渥美清さん。そして倍賞千恵子さん、前田吟さん、吉岡秀隆さんはじめ豪華メンバーで敢行する。どんな内容かというと、山田監督からちょっと不思議な映画になるというヒントが出たが、みなさんに喜んでいただけるような素晴らしい作品になると思う」とだけ話して、言葉を濁した。
キーパーソンは満男くん
 すでに亡くなっている渥美さんの主演で新作とは、いったいどういうことなのか。ここでちょっと「男はつらいよ」シリーズを振り返ってみたい。
 当初はテレビの連続ドラマとして昭和43年から44年にかけて26話が放送されたが、44年8月に映画としてよみがえる。東京は葛飾・柴又生まれの「フーテンの寅」こと車寅次郎を主人公に、叔父夫婦が営む団子屋に集まる人々とのふれあいを描く泣いて笑える人情喜劇で、年に2本のペースで新作が作られる大ヒットシリーズとなった。
 威勢がよくて情に厚いが、女性にはからっきし縁がない、という寅さんのキャラクターが、渥美さんの名演と相まって人気を呼び、寅さんが思いを寄せるマドンナとの全国各地を舞台にした恋模様が毎回のお楽しみになっていた。
 個性的なレギュラー出演陣との当意即妙のやりとりも見ものだったが、その筆頭が、寅さんの妹、さくら(倍賞千恵子)の諏訪一家だった。さくらは、第1作で裏の印刷工場の従業員、諏訪博(前田吟)と結婚。満男が誕生するところで終わっているが、その後、シリーズは満男の成長をつぶさに描いていて、特に27作目の「浪花の恋の寅次郎」(昭和56年)で吉岡秀隆になってからは、満男の恋の指南役を寅さんが務めるといった場面も多い。
トリュフォーを超える
  「ときどきDVDで振り返って眺めてみるが、吉岡君の成長のプロセスをもうちょっと詰めると、とても面白いことになるんじゃないか。そんな映画って今までなかったんじゃないかと思うんです」
 山田監督は発表会の席上でこう語り、新作の一端を明かし、フランソワ・トリュフォー監督の不朽の名作「大人は判(わか)ってくれない」(1959年)を比較対照に挙げた。12歳の少年、アントワーヌ・ドワネル(ジャン=ピエール・レオ)の冒険を描いたこの作品はシリーズ化され、「逃げ去る恋」(79年)まで5作品が作られたが、それでも20年の成長だった。
 「それもずっと年月を追っているわけじゃない。でも僕たちの映画はずっと毎年毎年、最初のころは年に2回ずつ、成長の記録をとらえてきた。1人の少年が大人になるまでの精神の成長を描いて、さらに現在に至るまでを何とかして映画にできないか。実はこれは何年も前から考えていたことで、それが50周年を機についに実現できることになったということです」
 発表会に出席していたさくら役の倍賞千恵子さん(77)は「50年って何かすごいなと思う」と改めて感慨を漏らした。
 「もしお兄ちゃん(渥美さん)がどこかで見ていたら、『おい、さくら。まだ山田さんと映画を作んなきゃだめだよ』と言っているような気もする。本当にうれしいなと思うのは、生き残った諏訪さくらの家族と一緒に、この映画が作れるということ。今のままの自分でさくらさんができたらと楽しみにしています」と50年前と同じ役を演じることのできる喜びをかみしめていた。(文化部 藤井克郎)
 「男はつらいよ」第50作の新作は、「50周年プロジェクト」の一環として、来年に公開される予定。ほかに全49作品を一挙に最先端の4Kデジタルで修復したり、全作品のブルーレイ発売、柴又の「寅さん記念館」の大規模リニューアルなど、50周年となる来年にはさまざまな企画が予定されている。