「万引き家族」是枝裕和監督 絆とは…生まれ壊れるまで

 
是枝裕和監督は「家族のあり方をさまざまな切り口から考察できる」と語る(寺河内美奈撮影)

 第71回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」に輝いた是枝裕和監督(56)の「万引き家族」(8日から東京・TOHOシネマズ日比谷などで全国公開)は、万引で暮らす貧しい6人家族の物語。彼らの日常を通して、是枝監督は「よく耳にする“家族の絆”とはそもそも何か。改めて意味を考えたくなった」と語る。(高橋天地)

 着想は、家族が絡んださまざまな事件の報道から得た。中でも万引で生活する親子の事件が心に残った。逮捕された親子は、釣りざおだけは転売せず家に置いていたという。

 「家族で釣りをしたくて売らなかったらしい。仲良く釣り糸を垂れる親子の絵が頭に浮かんだ。万引は犯罪だが、ほほえましく、いい話だとも思った」と是枝監督。

 また、平成23年の東日本大震災以降、家族の絆という言葉が連呼されるようになったが、「どこかしっくりこない。犯罪だけでつながる家族にも、彼らなりの家族の絆があるのではないか」と考えたことも作品の製作を後押しした。

 物語の序盤で、親から虐待された幼いゆり(佐々木みゆ)が一家に加わる。同じく虐待された経験を持つ信代(安藤サクラ)は、次第にゆりをいとおしく思い始め、ゆりも二度と家に戻らない決意を固める。

 信代が「私たちは(ゆりに)選ばれたのかな?」と初枝(樹木希林)に問い、けげんな表情の初枝に「絆よ、絆」と口にする場面には強く胸を揺さぶられる。

 是枝監督は「作品のテーマに触れる重要な場面」と指摘。「家族の絆の強さは血のつながりではなく、過ごした時間が作るのではないか」と語る。

 鍵となるせりふだけに、安藤は「冗談めかして言うべきか、それとも思わず本音が出た…という感じで言うか」と迷っていたが、是枝監督は「恥ずかしさを出すために冗談めかしてほしい」と要望したという。

 本作には多くの切り口が盛り込まれた。是枝監督は「だめな父親を反面教師とする少年の成長物語でもあり、頑張って父親になろうとする男の物語でもある。家族が生まれてから壊れるまでを見つめることで描きたかった」と説明する。

 これまで多くの作品で家族のあり方を問うてきたが、「周囲が思うほど、そういう意識はない。一歩引いた場所から社会を見つめ、違和感や喜怒哀楽の感情を出発点に作品を作っていきたい」と強調した。

 【あらすじ】東京・下町の古ぼけた平屋。家主の祖母、初枝(樹木希林)、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹、亜紀(松岡茉優)が暮らしていた。生活の糧は初枝の年金と万引で賄っていた。ある日、親の暴力に苦しむ少女、ゆり(佐々木みゆ)と出会った治は不憫(ふびん)に思って自宅に連れ帰り、信代が娘として面倒を見ることにしたが…。