【カンヌ映画祭】映画評論家・北川れい子さん 「“世界のコレエダ”に」 - 産経ニュース

【カンヌ映画祭】映画評論家・北川れい子さん 「“世界のコレエダ”に」

第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞し、トロフィーを手に取材に応じる是枝裕和監督=19日、フランス・カンヌ(共同)
 日本人の頑張りが世界最高峰の舞台で認められ、私は素直にうれしい。「万引き家族」は、日本の貧困家庭の現実を徹底したリアリズムで見事に描ききった力作で、是枝監督は真骨頂を発揮した形だ。
 都市開発の波からぽつんと取り残され、部屋にすきま風の吹く荒れた平屋の自宅、古い家具やみすぼらしい服装など、その貧困ぶりの描写とそれを担った美術担当者たちが作品の土台を支えている。
 配役も最高だった。中でも子供を産めない女性を演じた主演の安藤サクラさんの描写が見事。赤ちゃんを産んで半年余りで「万引き家族」の撮影に臨んだ安藤さんは、若い頃に比べ、ふっくらとしていた。それが、今回の中年に差し掛かった母親役ではごく自然な印象を与えていた。
 一方、貧困ぶりの描写は日本人から見れば若干誇張されたきらいもあり、私は心配していた。一昔前の中国映画に登場する貧しい家庭の描写を想起させ、世界に日本の家族はこんなにひどいのか-と世界に誤ったメッセージを送るのではないかと考えたからだ。しかし、審査委員たちは映像世界を現実の一部として冷静にストレートに受け止めたようで、私はとても満足している。
 今回の快挙を受け、是枝監督は、すでに“世界のキタノ”と認められている北野武監督(71)と同様、世界の映画ファンに“世界のコレエダ”と認識されるだろう。