「見過ごしてしまう家族の姿を可視化する」 是枝監督のカンヌ受賞会見 一問一答 

カンヌ映画祭
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞し、写真撮影に応じる是枝裕和監督=19日、フランス・カンヌ(ゲッティ=共同)

 第71回カンヌ国際映画祭で19日、是枝裕和監督が映画「万引き家族」で最高賞パルムドールを受賞後、会場で行った記者会見の一問一答は以下の通り。

 -あなたは3度カンヌで受賞し、家族を描く監督と思われています

 「そうですね。ファミリードラマの作家だという風に、ここでの認知と今回の作品と受賞で(私についての)とらえ方がますます強くなってしまうかもしれません。自分では、そうは思ってはいないので、いろんなジャンルのものにチャレンジできればなあ、と思っています。

 自分が年齢を重ねて変化していくと、いろんな家族の形が見え、見えてくる家族の形というのも変わってくる。同じことを繰り返すわけではなく、僕が60代、70代になったとき、また違うファミリードラマができるのではないかと思っています」

 -子供とどのように接し、撮影していますか

 「いつもオーディションでいろんな子供たちに会って、その年代の特徴をつかみながら、自分が撮りたいなと思う子供を残していく。台本はいつも渡さないので、現場に入って僕が口伝えでせりふを渡したり、時には役者に演出の一部を担ってもらいながら、子供からどういう感情や表情を引き出すかを手伝ってもらいながら、撮影現場で全部作っていくというやり方をする。彼らは予習もしてこないし、宿題もないので、毎日笑顔で撮影現場にやってくる。そういう環境を目指しています」

 -日本の家族を描いているのか。あなた自身の家族体験とつながっているか。

 「家族を描くとき、どうすると日本的か、日本的ではないかということは、そんなに考えては作りません。ただ、今の日本の社会の中で隅に追いやられている、本当なら見過ごしてしまうかもしれない家族の姿をどう可視化するかということは考えています。それは『誰も知らない』のときもそうでしたし、今回もそうでした。

 僕が子供の頃住んでいたのは、(今回の作品の)あの家と同じように、平屋で狭くて。僕は自分の部屋がなかったので、押し入れの中に宝物と教科書を持ち込んで、そこを自分の部屋にしていた記憶があります。その押し入れの中から、子供の世界を見るということは、自分の実体験としてあります。万引をしていたわけではありません」

 -アイデアはどうやって得たのか

 「どうして描こうと思ったのかを後付けで語ると、だいたい監督は嘘をつくので、本当のことはしゃべれないと思います。だが、一つは『そして父になる』をやった後-あれは家族は『時間なのか、血なのか』を問いながら作った映画でしたが-その先に『産まないと親になれないのだろうか』という問いをたててみようと。今回の物語の中心にいるのは、自分の子供ではない子供を育てながら父親になろうとし、母親になりたいと思う、そういう人たちの話をやろうと思ったのが最初でした。

 彼らをどういう状況に置こうかと考えたとき、ここ数年、日本で起きている、いくつかの家族をめぐる出来事を新聞やニュースで目にした。年金詐欺、家族で万引をしているという、経済的にかなり追い込まれた状況で犯罪や年金を不正に受給することで、かろうじて生活を成り立たせている家族がいる。この家族の中にそういうテーマを持ち込ませてみようと思ったのが、今回の映画になりました」