大成建設、工場全体で脱炭素化 新基準を策定
ゼネコン大手の大成建設は13日までに、工場の生産エリアで使用する空調や換気、照明設備など施設全体で使う電力を自前でまかなう、独自の環境基準を策定した。工場は用途によって設備や広さが異なり、標準的なエネルギー消費量を割り出すことが困難とされる。このため、現在の国の環境評価対象は事務室や倉庫の照明で使ったエネルギーなど一部に限られる。これを工場内の全てのエリアに広げる。
埼玉県本庄市で今月内にも着工する工場で、新たな環境基準を採用する。工場は沖電気工業が発注した電子機器を生産する拠点で、延べ床面積約1万9千平方メートルの地上2階建て。完成は令和4年3月を予定する。屋根に太陽光発電設備を取り付け、大成建設が同工場の消費エネルギーのデータを分析し、電力使用の運用改善策を沖電気側に提案。生産工場の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を後押しする。
政府は再生可能エネルギーなどを使い高層ビルの温室効果ガスの実質排出量をゼロにする「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」という評価基準を設定。平成26年4月に閣議決定した「第4次エネルギー基本計画」で、令和12年までの新築建築物のZEB化を実現する政策目標を設定した。基準を満たせば国の補助が受けられる仕組みがある。ZEBの認定件数は令和2年1月時点で計323件に上り、件数は年々増加傾向にあるという。
現在の国の基準では、工場の消費エネルギーは、高層ビル向けのZEBの枠組みで評価している。ただこの場合、評価対象は工場の事務室や倉庫の照明などに限られる。
大成建設はこのほど、工場のデータを基に生産エリアの空調、換気、照明設備などの消費エネルギーを含めて管理するシステムを構築した。ただし、生産設備そのもので使われるエネルギーは評価対象からは外す。政府関係者はZEBに関する委員会で、大成建設の新基準についても採用を検討していくとしている。