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今年の新入社員諸君 君たちは運がいい 鹿間孝一

 「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助は入社試験の面接で「君は運がいいか?」と尋ね、「運がいい」と答えた人を採用した。

 自分は運が強いと確信していれば、どんなことも受け入れて立ち向かう勇気と力が生まれてくる。他人から見ると決して運がいいとは思えない状態でも、自分は運がいいと思える前向きな姿勢が必要だ。

 今年の新入社員諸君、君たちは運がいい-と言ったら、きっとブーイングの嵐だろう。

 新型コロナウイルスによって日本経済は大きなダメージを受けた。とくに旅行・観光業界はインバウンド(訪日外国人客)景気から一転して冷え込んだ。救世主と期待された「Go To トラベル」も再開のめどが立たず、就職人気ランキング上位の航空会社は大幅減便で余った人員を異業種へ出向させている。飲食サービス業も時短営業を余儀なくされて青息吐息だ。

 他の業界でも新規採用どころではない企業が多い。会社説明会やインターンシップが中止されるなど学生の就職活動はままならず、ここ数年、上昇を続けた就職内定率はダウンした。内定取り消しもあった。

 就職が決まってからも不安は消えない。テレワークが増えて、働き方は大きく変わりつつある。どんな仕事を、どのようにやればいいのか。手取り足取り教えてほしいが、先輩から本音が聞ける飲食を伴う会合は自粛である。こんな社会人の門出の、どこが運がいいと言うのか。

 かつてバブルの時代に就職は売り手市場で、企業はこぞって大量採用した。内定を出した学生を囲い込むため、海外旅行に連れて行ったりした。ちやほやされたのは入社までで、大人数の厳しい生存競争が待っていたが、「バブル世代」はいつまでも甘やかされたイメージがついて回った。

 比べれば、君たちはよほど運がいい。コロナ禍という未曽有の危機に、誰もが暗中模索である。経験で答えが見つからないなら、新入社員の若い、新しい発想の出番だ。

 と言って、すぐに会社の命運を左右するような役目が回ってくるわけがない。与えられた仕事は嫌がらずに、とにかくやってみることだ。阪急電鉄グループを創業した小林一三(いちぞう)はこう言った。

 「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしてはおかぬ」

 しかま・こういち 昭和26年生まれ。社会部遊軍記者が長く、社会部長、編集長、日本工業新聞社専務などを歴任。特別記者兼論説委員として8年7カ月にわたって大阪本社発行夕刊1面コラム「湊町365」(産経ニュースは「浪速風」で掲載)を執筆した。

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