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ファンコミュニティで将来世代との絆を 丸井グループがめざす共創ビジネス

 新型コロナウイルスの影響により、持続可能性を高める「サステナビリティ経営」への関心が高まっている。SDGs(持続可能な開発目標)推進を掲げる丸井グループではSDGsの理念の根幹を、すべての人の幸せをめざす「インクルージョン(包摂)」と位置づける。さまざまな世代の消費者や地域社会、従業員など立場の違う者同士の利益の調和を図る「共創ビジネス」を実践しており、オンライン上でファンが集う「ファンコミュニティ」に新たな対話のチャンスを見出している。

ファンの〝好き〟が集まるイベント

 「これ、欲しかったんだよね!」「私もめっちゃ好き!」「買ってみようかな」

 神戸市中央区のショッピング施設「神戸マルイ」最上階のイベントスペースで今月開かれた、韓国お菓子マーケット「アンニョーン! KOREA」。ハングル表記のお菓子や即席麺など計約90種が並ぶ空間は、コロナ禍にも関わらず、10~20代の若者でにぎわっていた。丸井グループが運営する、韓国カルチャーのファンコミュニティ「チョアコミュ」の企画だ。日本でも人気の高い豆菓子「ハニーバターアーモンド」のさまざまなフレーバーや魚形のケーキ菓子「プンオパン」など、国内では珍しい商品もあり、なかには同じ商品を何袋も買って帰る人もいた。

韓国菓子を集めたイベント会場の様子
韓国菓子を集めたイベント会場の様子
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 チョアコミュは、ファンコミュニティ構築・運営大手のクオンが運営するファンコミュニティクラウド内にあり、約8千人が参加する。チョアは、韓国語で「好き」を意味し、K-POPや韓国コスメ、グルメなどをテーマに、会員が自由に語り合っている。好きな音楽グループのメンバーの誕生日を祝ったり、韓国コスメやグルメのお気に入りを教え合ったり。おすすめのお菓子を聞き取るトピックには、1000件以上の投稿が集まった。

 お菓子マーケットは、こうしたオンラインでの盛り上がりをオフラインにつなげる試みだ。あえて売れ筋ではなく、コミュニティで盛り上がったおすすめ商品を中心にそろえた。国内では珍しい商品もあり、なかにはハングル表記の目立つものも。コミュニティでの人気ランキングや会員のおすすめコメントで紹介すると、ファン推薦品とあって、韓国菓子を知らない来場者も「安心して買える」と喜んでいたという。

ハングル表記の目立つ珍しいお菓子にはコミュニティ会員のコメントが添えられている
ハングル表記の目立つ珍しいお菓子にはコミュニティ会員のコメントが添えられている
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ファンの気持ちに応えたい! 新たな出会い

 「ファンが自由に〝好き〟を語り合える場を作り、楽しみを広げる手伝いをしたかった」と、丸井グループのコミュニティ運営担当、日野原麻結さん(29)は話す。イベントをきっかけに地元神戸の韓国食品販売店「ディスカウントストア・ソウルマート神戸元町店」との新たなつながりが生まれ、多くの商品もそろえることができたという。「コロナ禍で韓国へ直接仕入れに行くことが難しいなか、お店が日本の韓国ファンの気持ちを大切にしてくれてうれしかった。イベント終了後も一緒に韓国ファンを盛り上げていけたら」と可能性を感じている。

 イベントに合わせ、施設入り口に告知ポスターを張り出したり、買い物客向けの抽選会景品に韓国菓子詰め合わせを用意したりと、コミュニティや韓国を知らない買い物客へもアピールしたことで、ファンとコミュニティの新たな出会いの場にもなった。「丸井とファンと地元の三者の力でできたイベント。今後もネット、リアルの両方で韓国気分を味わってもらえる機会を作っていきたい」と話す。

抽選会景品となった韓国菓子詰め合わせと、コミュニティキャラクターのまむ
抽選会景品となった韓国菓子詰め合わせと、コミュニティキャラクターのまむ
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コンテンツ愛に寄り添う

 実は同社が力を入れている若者の人気コンテンツは、韓国文化だけではない。アニメやゲームなども同様で、平成28年にはアニメ事業部を立ち上げ、コラボイベントのほかグッズの通販も行っている。アニメ事業への力の入れようは本格的で、様々な人気アニメとコラボし、キャラクターをデザインしたエポスカードを発行したり、アニメのテレビ番組や映画へ製作出資したりと、ファンの間でも話題になるほどだ。

 同社がこうしたコンテンツに力を入れるのは、10~20代との重要な接点の一つになるととらえているからだ。同社のサステナビリティ経営の指針をまとめた「VISION BOOK 2050」でも、投資家や顧客、地域や社会などに加え、10~20代の将来世代も重要なステークホルダーと位置付けている。コンテンツは、将来世代との「共創」を生む切り口なのだ。

 「若者の関心がファッションやブランドからコンテンツに移ってきた。ただコンテンツとコラボするのではなく、ファンと同じ目線に立ち、ファンに喜んでもらえるようなビジネスを作っていくことで、信頼関係を深めていきたい」と日野原さん。自身もK―POPアーティストの大ファンであり、「ファンは好きなアーティストや俳優を通して、韓国人の暮らし、身に着けているもの、食べているものにも興味を持っている」と、韓国文化を軸としたビジネスの可能性について実感を込めて語る。「ファンに寄り添い、ファンが何に魅力を感じているのかというエッセンスを探っていくことで、食やライフスタイルといった分野でファンが楽しめる新しいサービスを提供していきたい」と、ファンとの対話の意義を強調する。

コミュニティキャラクターのまむを肩に乗せる日野原麻結さん
コミュニティキャラクターのまむを肩に乗せる日野原麻結さん
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対話でめざす幸せ

 すべての人の幸せと利益の調和を実現する「インクルージョン」を掲げる同社には、パートナーとの対話を重視する企業風土がある。28年に福岡市の博多駅前に九州初の「博多マルイ」を出店した際には、〝お客様と一緒に作るお店〟を掲げ、コミュニティサイトを立ち上げてさまざまな世代の地元市民を募り、店のコンセプトや内装などを決めていった。約2年間にわたる「お客さま企画会議」では、のべ1万5000人以上の意見を集め、フード・スイーツフロアを1、2階に設けるなど、当時としては斬新な施設を作り上げた。

 「熱い思いをもったファンはいろんなところにいる。お客さまにとって、願いを形にしてくれるパートナーのような存在になりたい」と日野原さん。チョアコミュもまた、ファンとの貴重な共創の場になると期待しており、今後アニメやゲームなどのファンコミュニティ作りも構想している。

 ファンコミュニティで生まれたファン一人一人の熱い思いは、サービスや地域社会とどのように結びつき、形になっていくのか。2050年の未来は、だれかの「好き」から生まれるのかもしれない。

チョアコミュのトップページ
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提供:クオン株式会社

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