【登板】三井住友トラスト次期社長 高倉透氏 コロナ禍で「上善如水」の経営手腕発揮
人生の転機は平成7年1月17日早朝に起きた阪神大震災。旧住友信託銀行東京人事部の課長代理として、関西圏の社員の安否確認作業を実質的に指揮した。携帯電話が今ほど普及していなかった時代、発生から3日経っても連絡が取れない社員は3ケタに上った。
時間がたつにつれ、被災状況は悪化の一途をたどった。「危機が起きた際には、その場で一義的に自分で判断した方がいい」と痛感したという。
新型コロナウイルスの感染拡大、低金利環境の長期化、少子高齢化、金融規制の強化、デジタル化の進展、脱炭素化-。経済社会が混沌(こんとん)とする中でバトンを引き継ぐことになった。専業信託銀行グループとして、先行き不安を感じる個人や企業に向き合うことになる。
「精いっぱいお客さまの思いや夢を実現する活動に取り組む。ザ・トラストバンクの実現に向けて邁進(まいしん)していきたい」と決意を語る。
好きな言葉は古代中国の哲学者、老子の「上善如水」。自在な水の流れのように、いつでも攻守転じることができるように行動することを信条としている。激動の時代をどう生き抜くか、手腕が試される。
(米沢文)