ニュース 経済

「第二の創業期」迎えた電力会社が届ける新たな価値 中部電力ミライズ大谷真哉社長

その他の写真を見る(1/4枚)

 2016年以降電力の自由化が進められてきた中、いよいよ2020年に発送電分離がスタートし、電力システム改革は大きな節目を迎えている。多くの電力会社が分社化し、新規参入も加速し、企業や個人が自由に電力会社を選べるようになった。

 新型コロナウイルス感染症拡大の中、電力会社はどう変化していくのか。この4月中部電力が分社化され、販売事業会社として「中部電力ミライズ株式会社」が設立された。大谷真哉(しんや)社長に話を聞いた。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響

 新型コロナウイルス感染症拡大で、いつもと違う夏を迎えた。電力需要はどのような影響を受けているのだろうか。

大谷氏:テレワークの普及などで、家庭の電力需要は増えています。一方、産業用は工場の稼働と直結しており、6~7月で底を抜けた感じはありますが、昨年に比べて落ち込みは大きいです。

 こうした環境の下、設立された中部電力ミライズ。社長としての抱負を聞いた。

分社化は「第二の創業期」

大谷氏:3年ほどかけて、分社化に向け、カンパニー制への移行などの準備をしてきました。我々としては、非常に大きなチャンスをもらったと思っています。分社することで、思い切り新しいことをやっていくフィールドを頂いたと理解しており、「第二の創業期」と位置づけています。

 第二の創業期と聞くと、従業員の間にもチャレンジングな雰囲気が溢れていそうだ。

大谷氏:慎重に検討することも大事だが、これまでないことにチャレンジすることが大事だと思います。一線を飛び越えるために、一度やってみよう!という自由闊達な雰囲気を作っていきたいですね。

ミライズの強み

 競合が厳しくなっている中、中部電力ミライズの強みとは何か聞いた。

大谷氏:今までは電気とガスを販売してきて、いわゆるエネルギー会社として地域の方に育てて頂いてきました。今後は、「電気とガス以外のサービスをいかに早く作れるか」に力点を置くべきだと思っています。我々の強みは、これまで培ってきたお客さまとの信頼、分社化によってスピード感をもって早く判断できること、色々な競合他社が出てくる中でお客さまのマーケットに一番近い点です。これらの強みを遺憾なく発揮することが、ミライズの強みに繋がると思います。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、消費者のニーズも変化している。そうした変化に即応していくために重要なことはなんだろう。

大谷氏:大事なことは、「お客さまがどういう動きをしているか、いかにお客さまのニーズを捉えられるか」です。企業向けの営業担当が、直にお客さまのところに足を運び、お客さまの構内の設備も見せて頂いた上でコンサルティングをしています。そうすることで、色々な変化や新たなビジネスのヒントを捉えることができるのです。

 「丸亀製麺の茹で釜の事例」は、まさにこうした活動が実を結んだ例といえよう。省人化や電力の消費量の適切化、効率化などでお客さまに大きなメリットが生まれた。

省エネ茹で釜 出典)株式会社トリドール
省エネ茹で釜 出典)株式会社トリドール
その他の写真を見る(2/4枚)

 こうした取り組みも、中部電力ミライズの社員が現場に赴き、お客さまのニーズを吸い取ることが原点になっているのではないか。一方で、コンサルティングといえども、相手の懐に入ることが難しい場面もありそうだ。

大谷氏:もちろん、急に明日からやろう、では中々お客さまに受け入れてもらえません。電力の自由化が始まって約20年、中部電力では電気の提供のみのサービスではなく、お客さまの経営や品質向上、省人化など様々なことを視野にいれてお客さまのお手伝いをしてきました。何年も掛けて種をまいてきたものが、ようやく今、実を結んでいます。分社化前から、少しずつお客さまとの信頼関係を培ってきた歴史が我々の強みの1つであり、財産だと思っています。

 一方、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)経営や環境経営の流れが強まる中、省人化や省力化は電力消費の減少につながってしまうのではないだろうか?

大谷氏:コロナも含めて環境が変わる中、CO2削減や衛生環境の問題は今まで以上に大きな課題として受け止めています。「上手にエネルギーを使う」ということは、原点として持っていなければいけません。我々は先の丸亀製麺さんの例のように、お客さまのニーズをいち早くサービス化したり、お客さまと一緒に新しいものをしっかりと形にしたりしていきたいと思っています。

中部電力ミライズ提供
中部電力ミライズ提供
その他の写真を見る(3/4枚)

「新たな価値」を届ける「総合サービス企業」を目指す

 ここまでは、BtoBサービス、つまり企業に対するサービスについて聞いた。中部電力ミライズは、顧客のニーズが変化する中、BtoC、いわゆる個人のユーザー向けに「新たな価値」や、「パーソナライズされたサービス」を提供する「総合サービス企業」を目指すとしている。それらにはどのようなものがあるのだろうか。

大谷氏:今までは電気やガスを送る会社だったが、電気を送ることだけが目的ではなく、電気を使って生活が明るくなるとか、安全・安心が得られるなど、その奥にあるものを見極めて提供していきたい、というのがスタートです。暮らし周りのサービスにも取り組んでいます。「e-暮らし」という会社で、ハウスクリーニングや暮らしの保険、安全や買い物など、幅広いサービスを提供しています。これなど「新たな価値」の1つの姿です。

ハウスクリーニング(イメージ) 出典)e-暮らし
ハウスクリーニング(イメージ) 出典)e-暮らし
その他の写真を見る(4/4枚)

大谷氏:また、「パーソナライズされたサービス」では、お客さまが気付いていないようなニーズをこちらから持って行けるようなマーケティングを行っていきたいですね。例えばエアコンでは、学習した好みの温度設定を提供する、といったサービスも始めています。ITやAI(人工知能)を使いながら色々なサービスを提供できるようにすることが、1つのポイントだと考えています。

新しく、面白いサービスを考えることは社員にとってもわくわくする仕事なのではないだろうか。

大谷氏:中部電力ミライズの中に、「リビング・ビジネス営業本部」という部署を作りました。これまでの電気・ガスを売る、契約をするという仕事に、新しいサービスを付加していくため、エネルギーの安定供給という大事なDNAをしっかり守りながら、どう新しく仕事の幅を広げるか、毎日考えています。

 ベンチャー企業や異業種などとも積極的にアライアンスを組んでいきたいと言う大谷氏。ロボティクスやMaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)など、産業の変革は加速している。

大谷氏:確かにこうした動きは加速しています。いかに早くその変化をキャッチアップし、色々なものを峻別し見極めていくかが重要です。お客さまに安全・安心や便利さを提供し、中部電力ミライズの色々なサービスを受け入れて頂くというのが、ミッションです。スピード感を持ってしっかりと対応していきたいですね。

「迷ったら半歩前に出る」

 最後に、大谷社長の座右の銘を聞いた。

大谷氏:座右の銘というほどではないのですが、10年程前、社内研修の講師の方が「迷ったり分らないことがあったりした時は、半歩前に出ろ。そうすると、今いるところからのものと違う風景が見えてくる。次のことが見える」と仰っていました。私も迷うこともありますが、じっとしていても何も変わらないので、動いてやってみて、次のことを考えることを大事にしています。電気やエネルギーの枠組みを飛び越える勇気をミライズの社員の皆が持つことがとても大事なことだと考えています。

インタビューを終えて

 新型コロナウイルス感染症収束の兆しが見えない中、私達の日常や社会はこれからも大きく変化し続けていく。デジタル化は更に加速し、生活はますます便利になっていくだろう。一方で、CO2排出量削減や効率的なエネルギー利用も時代の要請だ。

 これからの社会に求められる「新たな価値」とは何か。こうしたチャレンジの先頭に立つ中部電力ミライズの新たな取り組みに今後にも注目したい。(エネルギーフロントライン編集長・安倍宏行)

提供:中部電力株式会社

ランキング