百貨店、巣ごもり「おせち」に勝機 秋以降商戦で巻き返しへ

大手百貨店4社が1日発表した8月の既存店売上高(速報値)は前年同月比で約1~3割の減少だった。新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う外出自粛などが響き、回復の足取りは鈍いままだが、各社は来年正月のおせち商戦で新型コロナ対応を強化させるなど、書き入れ時となる秋以降での巻き返しを狙う。
「年末年始は海外旅行や帰省をする消費者が減り、おせち需要は例年以上に伸びる」。1日におせちの内覧会を開いた高島屋の山下聡バイヤーは声に力をこめる。おせちは毎年3~5%ずつ売り上げを伸ばす商材だが、今年は「前年の7~8%増の上積みを目指したい」と鼻息が荒い。
期待の高さは足元の苦戦の裏返しでもある。8月の既存店売上高は三越伊勢丹ホールディングスが23・4%減、大丸松坂屋百貨店を運営するJ・フロントリテイリングも29・4%減と下落率が前月よりも拡大。一方で高島屋は18・2%減、そごう・西武は8・8%減とともに改善した。
商品別ではJフロントや高島屋、そごう・西武で高級ブランドが前年並みを確保した一方、帰省向けの手土産が減ったことなどで、これまでコロナ禍での売り上げを下支えしていた食料品が苦戦した。
態勢立て直しに向け、百貨店各社が照準を絞るのは年間最大の繁忙期となる年末年始を含む秋以降だ。9月中旬から順次、予約販売を始めるおせちもその一つで、松屋の小泉翔バイヤーは「新型コロナの影響による消費構造の変化を念頭に準備を進められた」と手応えを口にする。

焦点は「巣ごもり需要」への対応だ。高島屋は自宅で人気シェフ4人の味が楽しめるおせち、松屋は世界各国のソーセージが味わえるおせちを販売する。加えて各社とも個食タイプの品ぞろえなどを拡充。「帰省できない実家の両親に贈って、同じおせちを一緒に楽しむ」(高島屋)などのシーンを想定している。
ただ、新型コロナの収束時期が見通せない中、訪日外国人客による免税売上高などは今後も厳しい状況が続くとみられる。(佐久間修志)