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専門家に聞くテレワークのポイント 「中小企業にデジタル化のチャンス」 新型コロナで導入支援策が続々

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 テレワークの導入が急速に進んでいる。新型コロナウイルスの感染予防という危機対応を契機に、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方として市民権を獲得。大企業を中心に本格的な定着期に入りつつあるが、中小企業にはいまも導入に慎重な姿勢が目立つ。人材や投資が限られるなか、テレワークをいかに取り入れ、ビジネスの可能性を広げられるか。中小企業の将来を左右する課題について、一般社団法人日本テレワーク協会の冨吉直美主席研究員の話を基に解決へのポイントを探った。

小さく生んで大きく育てる

日本テレワーク協会 主席研究員 冨吉直美さん
日本テレワーク協会 主席研究員 冨吉直美さん
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 「大企業を中心に業務やコミュニケーションのデジタル化が進展し、ITを利用しないと会議にも参加できなくなる。テレワークは、中小企業がデジタル化に取り組むチャンスだ」。冨吉さんは導入の意義をこう強調する。

 テレワークは情報通信技術(ICT)を活用し、在宅勤務やモバイルワークや顧客企業、コワーキングスペースで仕事をする働き方。通勤時間やオフィス費用のムダを省き、作業効率の改善や仕事と子育ての両立などの効果が期待できる。

 これまで大企業やベンチャー企業を中心に働き方改革で徐々に浸透し、新型コロナの感染予防策として一気に導入が広がった。東京商工リサーチが5月12日までに集計したアンケート※1では、テレワークの実施率は55・9%となり、3月上旬(17・6%)※2から3倍以上に増加した。

 ただ、大企業(資本金1億円以上)が83.3%まで普及する一方、中小企業は50・9%にとどまる。なかでも小規模事業者ほど実施が低調になる傾向がある。

※1東京商工リサーチ調べ(n=2万1741) ※2同(n=1万6327)

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 大きな要因がテレワークはハードルが高いという”誤解”だ。東京商工会議所が3月に実施した感染対策のアンケート調査によると、テレワーク未実施企業は課題として労務管理など社内体制から、「パソコンやスマホなどの機器やネットワーク環境の設備が十分でない」「セキュリティー上の不安」とIT環境の整備まで幅広い項目を挙げている。

 これに対し、冨吉さんは「完璧を求めず、できることから始めるのが基本。不具合が起きたら改善するという、小さく生んで大きく育てる発想が必要だ」と指摘する。中小企業でもパソコンやスマホなど一つ一つの機器は業務での利用が増えているうえ、導入済みのケースも多い。サイバーセキュリティーは、警視庁がテレワーク勤務の対策をサイトで公表している。既存の機器を利用し、安全を確認しながら始めれば、結果的に大きな成果につながる可能性もある。

無料トライアルや補助金、応援サイトで導入後押し

 そのうえで、最初の一歩として社内の雑談から会議までコミュニケーションのデジタル化を勧める。例えば、大企業を中心に採用が広がるコミュニケーションアプリ「Microsoft Teams(チームズ)」は無料トライアル版を提供。日本マイクロソフトや各パソコンメーカーのホームページから簡単にダウンロードできるため、テレワークの導入に踏み出しやすい。

 チームズはSNS感覚でやり取りできるビジネスチャットや、資料を画面共有しながらのビデオ会議を安全な環境で実現できる。表計算ソフト「エクセル」など共有ファイルを複数のメンバーが共同編集でき、離れた場所でも”チーム”の業務の効率的な進行を可能にする。「完全在宅勤務時は社員の顔が見られるビデオ会議を使い、普段の会話はチャットで行うなど社内で使い方を探ってみてほしい」(冨吉さん)

Teamsさえあれば、複数のアプリをインストールすることなくテレワークが始められる
Teamsさえあれば、複数のアプリをインストールすることなくテレワークが始められる
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 また、補助金の活用も提案する。例えば、経済産業省の中小企業向け「IT導入補助金」は通常枠に加え、新型コロナ対策の補正予算で最大450万円を補助する特別枠を追加。補助率は通常は費用の半分以内だが、特別枠はテレワーク環境の整備などを対象に最大4分の3まで引き上げ、ソフトウエアに加えパソコンやタブレットなどハードのレンタル費用にも適用を広げた。

 一方、厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)は労務管理担当者の研修費用のほか、通信機器を対象としている。冨吉さんは「一般的に、目的が重複しなければ両方とも申請できる。ハードは経産省の補助で、労務管理は厚労省にとうまく組み合わせて活用してほしい」と説明する。

 さらに、ビジネスを支えるパソコンメーカー6社と日本マイクロソフトも今月、中小企業のテレワーク応援プロジェクトを立ち上げ、導入支援に乗り出した。最初の一歩で紹介したチームズの無料トライアル版に加え、導入法や効果を詳しく解説した電子版ガイドブックを展開する。

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 中小企業のIT機器選びの負担を軽減するため、各社がテレワークに最適なカメラやマイクを内蔵し、エクセルやパワーポイントなどビジネスに不可欠なアプリを集めた「Office2019」搭載機種を例示して紹介している。セキュリティーに配慮し、コンピューターウイルス対策を含むサポートが自動更新される基本ソフト(OS)「Windows 10Pro」搭載機種をそろえているので安心だ。

 緊急事態宣言が解除され、オフィス街にも一定の人の流れが戻ってきた。感染拡大を抑えながら、生活や事業を継続する「新常態(ニュー・ノーマル)」を探るいま、企業や働く人は将来を見据えた対応が求められる。

 冨吉さんは「テレワークが根付く企業と、元の勤務形態に戻る会社の”二極化”が進むと思う。AI(人工知能)やロボットの普及などデジタル化が進むなか、テレワークで会社や地域の枠を超えて人材を活用できるかが生き残りのカギになる」と話した。

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一般社団法人日本テレワーク協会 主席研究員 冨吉直美(とみよし・なおみ)
 富士ゼロックスでシステムエンジニアやソリューション企画を経て、2016年度から日本テレワーク協会に出向し、厚生労働省事業のモデル就業規則などの委員会の企画・運営を担当。17年度に福岡で完全在宅勤務を実現し、18度年からは東京、福岡の2拠点居住でITをフル活用した生産性向上のためのセルフマネジメントを実践している。テレワークに関する講演実績も多い。鹿児島県出身。

提供: NECパーソナルコンピュータ株式会社、Dynabook株式会社、デル株式会社、株式会社 日本HP、富士通株式会社、レノボ・ジャパン合同会社

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