ニュース 経済

目指すは「デジタル塗装革命」 自動車や航空機の凹凸や曲面にも美しく描く

その他の写真を見る(1/7枚)

 リコーグループ内の産業印刷事業における「塗装」分野を担うリコーデジタルペインティング(東京都町田市)が、世界市場の開拓へ向けて本格的に歩みだしている。一般のインクジェットとは異なり、粘性の高い塗料を精度よく遠くへ飛ばすことができる「独自のインクジェット塗装技術」が特徴だ。これまでの人手による「アナログ塗装」からプリンターによる「デジタル塗装」へと変換することで、作業者への負荷低減や生産性の向上を実現するなど、塗装ビジネスの未来地図を塗り替えていく。

巨大なプリンターが、トラックをキャンバスに器用に描く

 従来、トラックやバス、航空機のボディにイラストやデザインを描く方法は、フィルムに模様を描いてから、車両に貼り付ける「ラッピング方式」が一般的だった。リコーデジタルペインティングの「インクジェット塗装」は、プリンターのヘッドを使ってボディに直接描いてしまう画期的な技術だ。さらに、「重ね塗り」やアセトンでの拭き取りによるデザイン変更が可能なため、「ラッピング方式」に比べて貼り換えの手間やコストがかからないのが特徴だという。

 神奈川県相模原市に、大型トラックにデジタル印刷を施すためのインクジェット塗装機の組立作業所がある。縦4メートル、横13メートルもある組み台とプリンターヘッドによって構成されるインクジェット塗装機は、オフィスにあるプリンターしか見たことがない人にとっては、その巨大さと迫力に圧倒されてしまう。

車のボディへ直接描くことが出来るリコーのオートボディプリンター
車のボディへ直接描くことが出来るリコーのオートボディプリンター
その他の写真を見る(2/7枚)
従来のフィルム貼り付け施工に比べ低コスト、貼り付けの手間を省くことが可能
従来のフィルム貼り付け施工に比べ低コスト、貼り付けの手間を省くことが可能
その他の写真を見る(3/7枚)

 大型トラックを組み台に横付けし、スイッチを押すと、大きなプリンターヘッドが左右に勢いよく動き出す。作業員が筆を取ったり、何かを貼り付ける必要はない。小気味よく動くプリンターヘッドが、トラックのボディをキャンバスにして、あらかじめインプットしていたデザイン画や企業ロゴなどの模様を器用に描いていく。トラックの荷台の凹凸や、曲面への印刷にも、戸惑うことはなく、あっという間に仕上げてしまう。

 代表取締役会長の平松正己氏は「塗装分野は、デジタル化されていない最後の領域だが、当社独自のインクジェット塗装技術を用いて仕事をデジタル化することにより、塗装ビジネスの未来は大きく変わっていく」と話す。

航空機市場を開拓

 リコーデジタルペインティングでは、自動車のボディやさまざまな素材にダイレクトプリントを施す「国内向けオートボディプリンター」と、プロパンガスのボンベに充填ガスの期限や社名、住所などを高速印字する「LPGボンベ用プリンター」が中心だ。

 このほか、タイヤのサイドウォール(側面)に文字やイラスト、模様などを直接プリントできる「タイヤプリンター」などユニークな製品を事業者向けに提供している。タイヤプリンターを導入するタイヤ・ホイール販売店や自動車整備・板金塗装などの事業者は、独自のプリントビジネスを展開することで、新規顧客の獲得や同業他社との差別化につながるというわけだ。

従来困難とされてきたタイヤ側面への印刷を実現
従来困難とされてきたタイヤ側面への印刷を実現
その他の写真を見る(4/7枚)
複雑なイラストや模様を直接印刷することが可能
複雑なイラストや模様を直接印刷することが可能
その他の写真を見る(5/7枚)

 さらに、将来の事業の柱として期待されているのが、「航空機プリンター」である。航空機のボディや主翼、尾翼などに企業ロゴやデザイン、模様などを描くものだ。欧州の航空機メーカー向けの開発を行っているという。

デザインされた航空機の尾翼
デザインされた航空機の尾翼
その他の写真を見る(6/7枚)

 平松氏は「航空機のボディペインティングは、キャンペーン広告などに活用されることもあり、ニーズの高い分野だ。従来のフィルム方式は多くの人手と大量の作業時間を必要とするが、ボディペインティングの活用によって、低コストで柔軟性が高いボディペインティングが実現できる」と新しい市場の開拓に意欲を示す。

リコーデジタルペインティングの平松正己会長
リコーデジタルペインティングの平松正己会長
その他の写真を見る(7/7枚)

独自性の高いインクジェット技術とリコーのシナジー

 このインクジェット塗装技術は、1983年から操業を続けている株式会社エルエーシーが開発した。水平方向に塗料を精度よく遠くへ吹き付けるインクジェットヘッドの技術と、吹き付けた後も垂れにくい独自の塗料の開発によって、塗装のデジタル化を可能にしている。

 独自性の高いエルエーシーのインクジェットヘッド技術は、さまざまな業界で注目され続けてきた。実際に、リコーが協業を打診した時も、多くの企業からオファーがあったという。しかし、最終的に、エルエーシーの創業者が、リコー創業者の市村清の経営理念に共鳴し、2018年10月、リコーの完全子会社化を選択し、リコーグループ入りが実現。2019年8月から、リコーデジタルペインティングに社名変更した。

 同社が保有しているインクジェットヘッド技術と、リコーが保有している画像処理技術やインクジェットヘッド生産技術を融合することによるシナジー効果は計り知れない。実際に、リコーのインクジェットヘッド生産技術の導入により、生産工程の改良が実現し、工程設計を見直した効果で良品率の改善も見られている。

 また、平松氏は「さまざまな立体物への塗装のデジタル化を進めることができる技術・ノウハウを持つのは、当社だけだと考えている。リコーとのシナジーによって、事業成長を実現することが、塗料の付着やきつい仕事を伴うイメージもあった塗装作業員の労働環境問題や人手不足の問題の解消にもつながると信じている」と話している。

 グローバルにビジネスを展開しているリコーの知見やノウハウといったマーケティング力との融合により、海外マーケットへの展開を加速し、新たな事業領域の開拓も期待できる。東京都町田市の中小企業が持っていた技術が、世界を相手にしたグローバルビジネスへと飛躍する大きな可能性を秘めている。

※肩書は取材当時(2020年2月)のものです。

リコーデジタルペインティング株式会社の詳細はこちらから

人々の「はたらく」をご支援するリコーの取り組みについてはこちらから

提供:株式会社リコー

ランキング