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【理研が語る】心のあそびを大切に 李秀栄

あそびがあれば障害もなんのその
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 「五十にして天命を知る」。そんな立派なアラフィフとはいえないが、出会いに恵まれ幸せな人生を送っている。尊敬する恩師や頼もしい友人に共通するのは「心のあそび」。ユーモアで笑いに包み、時にはあえて遠回りをしてみる。AIにはまだまねできなかろう心のあそびが人生を、社会を豊かにする。博士研究員時代を過ごしたフランスで「C’est la vie(人生なんてそんなもの)」というフレーズをよく耳にした。諦めの境地ともとれるが、受け入れて前に進もうという人生を楽しむための心のあそびともとれる。

 体の中のあそび「柔軟性」。現在私が向き合っているテーマだ。体を作る細胞の中は、DNAやタンパク質、脂質、糖鎖といった「生体分子」でひしめき合っている。形や動き方など個性の異なる分子が集まり協調して生命を支えている。朝になれば目を覚まし、食事を取れば消化する。外からウイルスが侵入すれば、免疫機能を働かせ退治する。実に多様な機能を日々精巧にこなしている生体分子であるが、個々の分子は驚くほど柔軟に動いている。

 柔軟性のある素材がどのように精巧な機能を果たしているのか。多種多様な状況変化に対応するためにあそびは欠かせない。また逆に、柔軟性が多様性を生み出すとも言える。その仕組みを知るために、計算機の力を借りて生体分子の形や動きの解明に取り組んでいる。

 もともと計算機が好きでも得意でもなかった。大学時代、それ以上に実験センスがなくこの道に進んだ。計算化学という分野で研究を始めて25年が経つ。その間、国内外の拠点を転々としたが、その先々で大型の計算機「スーパーコンピューター(スパコン)」を使う機会に恵まれた。スパコンでできることは、15~20年後には手元のパソコンでできるようになる。未来を描く仕事だ。今はスパコンを使いタンパク質に薬がくっつく様子を調べている。薬は病気の原因タンパク質にくっついてその働きを抑えたり助けたりして病気の進行を抑える。従来はタンパク質の動きを止めて薬の付き方を調べ、その情報からもっと強く付く薬を設計してきた。それがスパコンにより、柔軟に動いているタンパク質に薬がくっつく様子を予測して可視化できるようになった。私が還暦を迎える頃には、パソコンで病気の原因タンパク質ごとにこのような予測ができるだろう。新薬の開発や治療スタイルも根本的に変わりうる。多様な未来像を描くとわくわくする。心のあそびは未来像も豊かにする。

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