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【風を読む】危機の「予防」と言うけれど 論説副委員長・長谷川秀行

日本銀行本店=東京都中央区(三尾郁恵撮影)
日本銀行本店=東京都中央区(三尾郁恵撮影)

 ここまで敵視されては立つ瀬もなかろう。トランプ米大統領から批判の集中砲火を浴び続ける米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長だ。約10年半ぶりの利下げに踏み切ったというのに、それでも不十分だと不満を抱くトランプ氏の攻撃は止まらない。パウエル氏を「無知」だと罵(ののし)り、中国の習近平国家主席を引き合いに「どちらが敵か」とまで言い放つ。

 筆者がパウエル氏の立場なら、もっと利下げをと口出しするトランプ氏に対し、まずは世界経済に火種をまき散らす自らの行動を改めよと逆ギレしそうなところだが、パウエル氏はそうしない。夏の利下げに引き続き、9月の追加利下げも濃厚なのだそうだ。

 米経済は底堅いから、普通なら利下げ局面ではない。だから誰しもトランプ氏による圧力の影響を疑うが、これを認めぬFRBは「予防的」な利下げだと説明する。米中摩擦のリスクが高まる中、これはこれで理解できる。

 予防的な利下げがうまくいったのは1998年である。米国景気は堅調だったが、FRBはアジア通貨危機の波及に備えて利下げし、そのおかげで経済の好調さを維持できた。リスクを予見し、適切な対策を講じるのは、金融に限らず経済政策の要諦である。

 だが時に、政府や中央銀行の予防的措置は大外れに終わる。安倍晋三首相による2度目の消費税増税の延期は典型だ。2017年に税率10%とする予定だったが、その1年前、世界経済はリーマン危機前と似た状況だからと延期を決めた。ところが17年の景気は世界同時回復の様相だったから、とんだ見込み違いである。結果論とはいえ、ここまで見事に外した例は珍しい。

 さて、その消費税増税が間近に迫ってきた。今のところ駆け込み需要は大きくなく、軽減税率もある。8%増税時より増税後の消費反動減は少ないかもしれない。さりとて世界経済のリスクは膨らみ、先は読みづらい。

 そんな中で日本はどこまで危機への予防ができるのか。追加緩和をするにも日銀はFRBほど余地がない。さんざん大規模緩和を続けてきたからであり、これ以上やったところで大きな効果は期待できない。結局、ここまで増税を先送りしたツケを払うことにならないよう願うほかないのである。

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