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米中貿易摩擦で「通貨戦争」も 円高で日銀に緩和圧力

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 米国が中国を「為替操作国」に指定したことで、6月末の首脳会談で一度は沈静化したかにみえた米中貿易摩擦が「通貨戦争」に発展しそうな勢いだ。輸出企業を後押しする通貨安は、通貨価値の下落に歯止めがかからなくなって資本が国外に流出するリスクとも背中合わせのため、中国や韓国など新興国通貨の大幅安は金融市場の混乱を招きやすい。相対的に安全な資産とされる円が買われて独歩高になっており、日本銀行は対応を迫られかねない状況だ。

 「貿易戦争の痛みを通貨安で和らげるということなら、貿易戦争が通貨戦争に変質する可能性がある」

 SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストはこう指摘する。「第4弾」までを含む米国の制裁関税で米国内での中国製品の価格競争力は10%強低下すると試算され、通貨安で補おうとすれば1ドル=8元弱まで人民元安にする必要があるという。

 ただ、元安で通貨の価値が下がれば、中国内の株式や不動産などを現金化しドル建て資産に換えて運用する動きが強まる。市場が動揺して資本の国外流出が進むのを防ぐため、中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は「競争的な通貨切り下げは行わない」と説明しており、元安容認がどこまで進むかは不透明だ。

 一方、中国が11年3カ月ぶりの元安水準になった5日には韓国の通貨ウォンが3年5カ月ぶり、インドネシアのルピアも1カ月半ぶりの安値になるなど新興国通貨が対ドルで下落した。

 韓国とインドネシアはいずれも7月に利下げし、通貨安による輸出の押し上げを図った。ただ、米国の対中制裁強化で世界経済の不透明感がさらに強まり、投資家が高リスクの新興国通貨を手放し円などの安全資産を買う動きが加速した。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が市場の期待通りに年内の追加利下げに踏み切れば、株価が安定し新興国通貨の動揺も収まるとの見方もある。それでも韓国では「これほど急激なウォン安は10年前の世界的な金融危機以来」(朝鮮日報)など、1997年のアジア通貨危機やリーマン・ショックに続く通貨危機を懸念する声すら出ている。

 こうした通貨戦争で巻き添えを食うのが日本だ。6日の東京外国為替市場は為替操作国指定の衝撃で一時1ドル=105円台半ばまで円高が進んだ。その後は人民銀の元取引の基準値が事前予想ほど元安水準ではないとして円安に戻したものの、円が当面買われやすい不安定な市場環境が続く。今年1月上旬に付けた104円台の高値水準を超えて円が急騰すれば、円高抑制のため日銀の追加緩和に期待が高まりそうだ。

 日銀は5日、財務省と金融庁との情報交換会で為替市場の投機的動きを牽制(けんせい)したばかり。次回の金融政策決定会合は9月18、19日と当面先になる。とはいえ、円相場の急変に対応するため臨時会合を開く選択肢もあり、市場の動きから目を離せない局面が続く。(田辺裕晶)

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