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電動化の波 スポーツカーにも

ポルシェ初のフル電動スポーツカー「タイカン」 ポルシェジャパン提供
ポルシェ初のフル電動スポーツカー「タイカン」 ポルシェジャパン提供
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 自動車産業の新潮流と言えば「CASE(ケース)」だ。「コネクテッド(つながる)」「オートノマス(自動運転)」「シェアリング(共同所有)」「エレクトリシティー(電動化)」の英語の頭文字だ。日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」は、今年3月にEV史上初の世界販売台数40万台を達成した。また、トヨタ自動車は6月に、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)など電動車の世界販売台数を2030年に550万台以上にするとした目標を、5年ほど前倒しして達成できるとの見通しを明らかにした。国内では2020年に超小型EVを販売する予定だ。

 米欧中の3大市場は電動化が加速している。天才経営者の異名を持つイーロン・マスク氏が創業した、EV専業メーカーである米国のテスラの2018年の世界新車販売台数は、過去最高の24万台を超え、前年実績に対し約2.4倍の大幅増となった。そのうち、量販型の「モデル3」が過半の14万5846台を占め、日本でもテスラ車を見かけることが増えてきた。

イーロン・マスク氏 出典)flickr : Steve Jurvetson
イーロン・マスク氏 出典)flickr : Steve Jurvetson
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 欧州勢も電動化に大きく舵を切っている。ドイツ自動車大手のBMWは、2023年までに25モデルの電動車を投入し、その半分以上を完全なEVにするという。フォルクスワーゲン(VW)は、今後10年間のEVの生産台数を2200万台にするとの計画を公表した。2028年までに計約70モデルのEVを売り出す。メルセデスベンツは2022年までに、全車種にEVやPHVなどを設定する計画だ。

 中国は既にEVでは世界最大の市場である。政府は2018年生産台数127万台だったEVなどの新エネルギー車(※1)の生産台数を2025年に約700万台に引き上げるとしている。欧州メーカーが中国市場を狙っているのは明らかだ。

HV、PHV、EVの世界市場(注:トラック・バス/超小型モビリティを除く。) 出典)株式会社富士経済
HV、PHV、EVの世界市場(注:トラック・バス/超小型モビリティを除く。) 出典)株式会社富士経済
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 さてそうした中、ポルシェAGから、ファン待望のフル電動スポーツカー「タイカン」のローンチが間近とのニュースが飛び込んできた。2019年9月初旬のワールドプレミアを控え、日本では年内に発表、2020年に販売を開始するという。ポルシェ初となるフル電動スポーツカー「タイカン」にかける同社の意気込みを見てみよう。

「ゼロインパクト・ファクトリー」というビジョンの追及

 ポルシェAGが進めているのが、「ゼロインパクト・ファクトリー」の実現だ。二酸化窒素(NO2)を吸収する技術を外壁に用いるなど地球環境に配慮した工場で、「タイカン」を生産する新工場で初めて採用された。アルミニウム製の外壁材の表面に二酸化チタンのコーティングが施されており、このコーティングが触媒となり、吸収した汚染粒子は、太陽光と大気中のわずかな湿気にさらされることで、水および硝酸塩という無害な物質に分解される。車両10台分の駐車スペースに、木が10本あった場合と同程度の吸収効果を生んでいるという。

ツッフェンハウゼンの「ゼロインパクト・ファクトリー」 Porsche AG提供
ツッフェンハウゼンの「ゼロインパクト・ファクトリー」 Porsche AG提供
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 さらに、熱とエネルギーを自社生産する「コージェネレーションプラント」も、ツッフェンハウゼン工場(シュツットガルト)で既に稼働を開始している。ヒートプラントとパワープラントは、バイオガスと有機廃棄物から生成される残余生産物のみで稼働する。エネルギー生産に伴い発生する熱も環境に放出せず、加熱のために利用される。生成される熱の約90%は、約1万2000人が働くツッフェンハウゼン拠点のオフィスと工場への暖房・温水供給用として利用される。この新しいコージェネレーションプラントの総合効率は83%を超えるという。

ツッフェンハウゼン工場「コージェネレーションプラント」 ポルシェジャパン提供
ツッフェンハウゼン工場「コージェネレーションプラント」 ポルシェジャパン提供
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 CO2を排出しないフル電動スポーツカー「タイカン」こそ、環境負荷がゼロの「ゼロインパクト・ファクトリー」で生産されるのがふさわしい、という同社の哲学と決意がうかがい知れる。

日本国内へ急速充電器を設置

 ポルシェジャパンは、タイカン国内導入にむけて、2020年半ばから、EVインフラのリーディングカンパニーであるABB製の急速充電器(※2)を全国のポルシェセンターと公共施設に設置する。まだ日本にない150kWでの急速充電を可能にする次世代CHAdeMO(※3)となり、30分以内に80%充電できる能力を備えた国内最高レベルの急速充電器だという。

 電気自動車の2大課題は、航続距離と充電ネットワークだと言われるが、急速充電器の共同開発と充電網の整備に力を入れるこうしたポルシェジャパンの姿勢は、ユーザーに利便性を与えるだけではなく、新型モデルに対する信頼感を醸成するだろう。

ABB Terra HP 急速充電器 ポルシェジャパン提供
ABB Terra HP 急速充電器 ポルシェジャパン提供
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タイカンのテスト最終段階に

 量産に入る前にすべての自動車は入念に最終テストドライブを行う。タイカンも内燃エンジンを搭載するスポーツカーと同じ厳格なテストプログラムを受けているところだ。マイナス30℃からプラス50℃に及ぶ世界の39か国でタイカンはテストドライブされ、早い段階からコンピューターシミュレーションと包括的なベンチテストが実施されたことで、テストプログラムは最終段階に到達している。

 ポルシェ初のフル電動スポーツカー「タイカン」は、600PS(440kW)以上の最高出力により、0-100km/h加速タイムは3.5秒以下を実現、最大航続距離は500km以上(NEDC準拠)に達する。

スカンジナビアの冷寒地でテストドライブをするタイカン ポルシェジャパン提供
スカンジナビアの冷寒地でテストドライブをするタイカン ポルシェジャパン提供
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 ポルシェの発表によると、全世界ですでに2万人以上が購入を検討しており、オプションプログラムリストに登録して頭金を支払ったとのこと。電動スポーツカーの人気は想像以上だ。

 読者の皆さんが電動化は実用的な車に向いていると思っていたらそれは少し違う。電気自動車は、スポーツカーでこそ、その真価を発揮するのだ。なぜなら電気モーターは、回転数がゼロの状態から一気に最大トルクを生み出すため、異次元の加速を実現できるからだ。環境に優しいだけでなく、運転する楽しさも味わえるのが電動スポーツカーなのだ。日本のユーザーがこれまで味わったことのないドライバビリティを体感できるのももうすぐだ。

(Japan In-depth編集長・安倍宏行)

提供:ポルシェジャパン

※1 新エネルギー車:中国政府が普及を促すプラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車の総称。

※2 ABB:CHAdeMOおよびCCSの充電規格協会の創設メンバーの1社で、EVインフラのリーディングカンパニー。現在73か国に10,500台のABB製DC急速充電器が公共の場所等に設置されている。

※3 CHAdeMO:電気自動車やプラグインハイブリッド車の急速充電器の商標名。

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